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ハンク・ジョーンズ [音楽(ジャズ)]

 前回「ザ・グレート・ジャズ・トリオ」の話をしたので、今日はその構成メンバーの一人、ハンク・ジョーンズについて話したいと思います。

 このトリオはCDで「KJLH」「MILESTONES」の2枚を持っています。前者が77年録音盤で後者は78年録音です。しかし、どちらかというと、私は「HANKY PANKY」という別の一枚、ハンク・ジョーンズがリーダーをとっているアルバムの方をよく聞いています。

 

  

HANKY PANKY/HANK JONES

ピアノ  ハンクジョーンズ
ベース  ロン・カーター
ドラムス グラディ・テイト
1975年 ニューヨーク録音

 強烈な個性がぶつかり合ったグレート・ジャズ・トリオより、とうぜんですがこちらの方が、ハンク・ジョーンズの魅力がうまく引き出されている気がします。メンバーで違うのはドラマーだけなのですが。

 さて、ハンク・ジョーンズはザ・グレート・ジャズ・トリオとして1978年に来日していますが、その2年前の1976年「ピアノ・プレイ・ハウス」と言う企画でも来日していました。1月27日、芝郵便貯金ホールで、私はハンク・ジョーンズの生の演奏に触れることが出来ました。

 「ピアノ・プレイ・ハウス」のメンバーは3人のピアニストでした。その顔ぶれは、ジョン・ルイスマリアン・マクパートランド、そしてハンク・ジョーンズでした。

 

 ジョン・ルイスは当時、MJQを解散したばかりでした。演奏スタイルは相変わらず、真摯で端正、たいへん抑制の効いたものでした。ちょっとクラッシックを聴くような感じでした。

 マリアン・マクパートランドは白人の婦人でイギリス出身だそうです。大きく両手を上げたり下げたり、ペダルを頻繁に使って、ダイナミックな演奏でした。「荒城の月」とガーシュインのメドレーをサービスしてくれました。

 3番目に出てきたのがハンク・ジョーンズでした。拍手の大きさから聴衆のほとんどのお目当てがハンク・ジョーンズだとわかる歓迎ぶりでした。

 彼は、サド・ジョーンズ、エルビン・ジョーンズ3兄弟の長兄です。長い間、レコード会社の専属ピアニストをしていたそうですが、有名なマイルス・デイビスとキャノンボール・アダレイの「サムシング・エルス」やポール・チェンバースの「ベース・オン・トップ」C・パーカーの「ナウ・ザ・タイム」などにもサイドメンとして参加しています。

 

  当日、ハンク・ジョーンズの演奏が始まると、一瞬にして彼は会場の聴衆を捉えました。音は、美しく際だっていて、しかもスイングします。ようやくみんなが好きなジャズに出会えたと言う感じでした。スインギーとかグルーヴィーと言った言葉がぴったり来るような演奏で、聞いていて楽しく、身体がしぜんに動き出します。

 観客が乗ってくると、ハンク・ジョーンズもそれに応えようと更に演奏に熱が入ります。会場は、演奏者も観客も幸せなノッテイル一体感に包まれていました。

 司会のイソノテルヲさんが言っていたように、その夜は完全なアコースティックでした。クラッシックのコンサートのように、耳を澄まさないと音がよく聞こえません。しかし、聞きなれてくると、一音一音の表情が実に豊かに響くのがわかってきます。

 ハンク・ジョーンズの演奏スタイルも独特のものでした。一音でも逃すまいとするかのように上半身を折りたたんで鍵盤の上に覆い被さります。両の掌を広げて鍵盤の真上すぐに構え、一瞬たりと手が鍵盤の上を離れません。そこから巧みな指捌きによって、無数の美しい音が紡ぎ出されます。

 その独特のスタイルはピアニストの姿勢としては正しくないのでしょうが、長年の積み重ねの間に彼が独自に編み出したものなのだと思います。まさに職人芸、演奏の方も派手さはないけれどいぶし銀の輝きでした。

  最後に、それぞれの組み合わせでピアノ・デュオがありましたが、やはりハンク・ジョーンズとジョン・ルイスの組み合わせが圧巻でした。ハンク・ジョーンズが歌い、ジョン・ルイスがそこにからみ合う。ジョン・ルイス、こう言うときのプレイはまさに絶妙です。

 コンサートは、たぶん、ハンク・ジョーンズが乗りまくったせいでしょうか、3時間という異例の長さでした。最後のアンコールは「Cジャム・ブルース」、観客は大喜びに盛り上がって、楽しい一夜は終わりました。

 この夜以来、私はハンク・ジョーンズのファンになりました。


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