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星影のステラ [音楽(ジャズ)]

 人は十分に与えられているときは、そのありがたみに気づかないもののようです。それどころか物事によっては、失っていても気づきません。あるとき、何かの拍子に再び手にしたとき、初めてそのことの重要性やありがたみに気づくことがあります。

 と言っても、逃げた女房が戻ってきてありがたみが身に沁みたとか、貯金が底をついてしまったら、運良く宝くじに当たったなんて話ではありません。星の話です。

 昔、東京暮らしをしていた頃、冬に田舎に帰ると、夜空の星のにぎやかさと美しさに今更のように驚かされたことがありました。子供の頃からずっと見ていた景色であったはずなのに、久し振りに仰ぐ田舎の夜空には、こんなにもたくさんの星があったのかと改めて感動させられ、寒さも忘れてしばし見上げていました。

 

fuyu-view.gif

 

 

 星の一つ一つが手に取るように大きくて、空いっぱいに散らばっていました。生き物のように瞬いて、見上げていると降ってくるようでした。

 東京の夜空は明るすぎて、ネオンサインの輝きばかりが目立っていました。空気の汚れも関係あったのでしょうが、それ以上に都会の夜の明るさが星を見えなくしていたように思います。

 それから何十年も経って、すっかり田舎の夜空には慣れっこになったはず、東京から帰ってきたときほどの感激と驚きはもはやないのですが、夜空の美しさには変わりありません。

 今でも冬の夜に空を見上げて、満天の星の美しさにしばし見とれます。夜空を家屋の庇の影が切り取って、その向こうに星が輝いているのもいいものです。

 そんな様子をなんとかカメラで収めたいと思うのですが、さすがに最近買ったデジタル一眼レフカメラでも無理のようですね。特別なテクニックがいるんでしょうね。

 この頃は冬もずいぶん進んで、冬の星座の代表、オリオンもずいぶん南に位置を変えました。また、今夜あたりは満月が近づいているのか月の明かりが少し星明かりをスポイルしているのが残念です。

 

 星空を見上げながら思い浮かべるのは、Stella By Starlightです。この曲名を「星影のステラ」と訳したのはうまいですね。「星影」、星明りとか星の光と言った意味だそうです。本末転倒ですが、歌より先に題名に惹かれてしまいました。

 ロマンチックなタイトルからして、てっきりミュージカルから来ていると思っていたのですが、映画音楽、しかもオカルト映画の主題曲だったそうです。作曲は「八十日間世界一周」などでおなじみのビクター・ヤングで当初は歌詞がなかったそうです。 


Stella By Starlight
【星影のステラ】

作詞:ネッド・ワシントン
作曲:ヴィクター・ヤング
1944年
1946年(歌曲として)


《ヴァース》
星の光に包まれたステラを見たことがあるかい?
月明かりを髪に浴び一人たたずむ彼女を
星の光に包まれたステラを見たことがあるかい?
こんなにめずらしい狂喜をいつ知っていたって言うんだい?

《コーラス》
いつも春のように
小鳥がさえずるあの歌は
歳月を経っても変わらない
そっと寄り添う恋人たちを岸辺のさざ波がつつむ
夕暮れどきの小川のせせらぎ
壮大なシンフォニーのような星の光のステラ
それは夢ではない光の中のステラ
私は心底思う
ステラはすべてで、それ以上のもの
ステラはこの地球上で私にとってのすべて
ステラはみんなが崇拝するすべてだということ

 

 この曲の演奏や歌は枚挙に暇がありません。歌ではフランク・シナトラアニタ・オディ、変わったところでは、サリナ・ジョーンズチック・コリア、インストルメンタルになるとマイルス・デイビスビル・エバンス、キース・ジャレット、チェット・ベイカー、スタン・ゲッツ・・・

 

DSC_0001.JPG その中でわたしはマイルス・デイビス・セクステットの演奏を選ぶことにしました。夜空いっぱいに輝く星座と冬の夜の凍てついた空気に彼のミュート・トランペットがふさわしい気がします。わたし自身、一番最初にこの曲を知ったのはマイルスのこのアルバムでした。

 

MILES DAVIS / 1958 MILES Miles Davis(tp) John Coltrane(ts) Cannonball Addderley(as) Bill Evans(p) Paul Chambers(b) Jimmy Cobb(ds)  


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yukky_z

曲も素晴らしいですが、トランペットの音がいいですね!
アナログ盤で聴くと、数段いいんでしょうね?
by yukky_z (2010-01-29 21:39) 

たいへー

私も星空の綺麗な田舎町に住んでおります。(笑
子供の頃は、ウルトラの星「M78星雲」を
本気で探していました・・・
by たいへー (2010-01-30 08:01) 

kurakichi

これは最高のsextetですね。
by kurakichi (2010-01-30 08:31) 

駅員3

私は沖縄で数年暮らして東京に戻って来た時に、東京の空気のまずさに驚いたものです。
今ではその空気を普通に吸って、何も感じません[冷や汗][あせあせ(飛び散る汗)]
by 駅員3 (2010-01-30 09:36) 

stone-9

この辺りではほんの僅かしか星は見えませんね。
今日(30日)が満月のようですね。
同じ月に2度満月が見られるのは珍しい事だそうで、
1回目がファースト・ムーン、2回目がブルー・ムーンと言うそうです。

Stella By Starlightが、
ヴィクター・ヤングの作曲とは知りませんでした。
by stone-9 (2010-01-30 13:35) 

FUCKINTOSH66

ほんとに、こんな夜空があるのか?ってくらい綺麗ですね☆

ウチ家族には帰省する田舎がないので、私が中学にあがる頃まで年に2回、家族みんなで地方を旅行してたんですが、幼少期、はじめて満天の星空を見たとき、周囲の真っ暗さとあまりの☆の多さにビックリして怖くなり、大泣きして家族を困らせました(笑)と、自分の心臓の音が聞こえてくるほどの静けさにピーンと耳鳴りがしてしまって、朝になるまで眠れなかったのを今でも覚えています(笑)

マイルス、うわぁ〜これイイですねぇ。映像もnice♪
by FUCKINTOSH66 (2010-01-30 18:16) 

tempo

最近なんだかんだ言ってもMilesやEvansはやっぱり良いなぁと思うようになりました。このアルバムは日本制作の未発表音源集だと思いますが(間違っていたらすみません)良いアルバムですね。
by tempo (2010-01-30 19:35) 

空兵ーS

yukky_zさん
こんばんは

「カインド・オブ・ブルー」直前の演奏で、マイルスのミュートプレイが
佳境に入っている頃ですね。この曲はレコードで聴きましたが、この頃のマイルスの音は、CDでも遜色ないような気がします。独特な音色のせいでしょうか。
by 空兵ーS (2010-01-30 20:35) 

空兵ーS

たいへーさん
こんばんは

信州の空も星がきれいですね。
学生の頃、白樺湖でキャンプした夜の空を思い出しました。
夏だったのに、すごくきれいでした。
あんなにたくさんあるのですから、ウルトラの星、探したくなりますよね。
by 空兵ーS (2010-01-30 20:38) 

空兵ーS

kurakichiさん
こんばんは

この演奏の録音は、「カインド・オブ・ブルー」の前年、「サムシング・エルス」と同じ年です。
マイルスのソロの最後の音にかぶるように、コルトレーンのソロが入ってくるところなどは、痺れますね。
by 空兵ーS (2010-01-30 20:43) 

空兵ーS

駅員3さん
こんばんは

駅員3さんは、東京住まいでも
子供たちと一緒にキャンプを経験されているので、
地方の夜空の凄さは実感されておられると思います。
by 空兵ーS (2010-01-30 20:46) 

空兵ーS

sotoneー9さん
こんばんは

sotoneー9さんのブログを見ていると、
花や野鳥の写真が多くて、東京の懐の深さを実感します。

今日が満月ですね。あいにく曇りがちですが、月は何とか見えています。
ひと月に二度の満月、しかもそんな呼び方があるとは知りませんでした。
グレン・ミラーはどっちの月を歌ったんでしょうね。



by 空兵ーS (2010-01-30 20:52) 

空兵ーS

FUCKINTOSH66さん
こんばんは

都会育ちのF66さんにはそんな体験があったんですね。
満天の星月夜の凄みと迫力ですね。
確かに、星月夜の凄みは映像的で、音は関係ないはずなのですが
それは当たり前のようにピーンと張り詰めた静寂ですね。
マイルスのミュート・ソロ以外、音は聞いた事がないですね。
by 空兵ーS (2010-01-30 21:02) 

空兵ーS

tempoさん
こんばんは

このレコードは若い頃東京にいたときに買ったもので、オリジナルじゃないのでしょうね。CBS盤でジャケットが情けないくらいぺらぺらの輸入盤です。アマゾンで見てみると、池田満寿夫さんのジャケットのものとだいたい一致するようですが、収録曲が少し違いますね。
この頃のマイルスの充実ぶりがうかがえるアルバムですね。
by 空兵ーS (2010-01-30 21:22) 

なちゃ

手を伸ばせばとどきそうな星空・・・きれい^^
この演奏ははじめて聴きました。
☆がタイトルについてる曲はやっぱり美しいメロディが多いですね。
by なちゃ (2010-01-30 21:35) 

空兵ーS

なちゃさん
こんばんは

検索していたら、冬の夜空のファンのサイトがありましたね。
それくらい冬の夜空はきれいでファンも多いのでしょうね。
この頃のマイルスは好きですね。
今回改めて聞いて、昔よく聞いていたことを思い出しました。
タイトルが美しい曲はメロディも美しいですね。
by 空兵ーS (2010-01-30 22:19) 

kasumi

アニタ・オディで知った、Stella By Starlight・・・
とても好きな歌です。インストでは、あまり聴いたことが
ないのですが、トランペットの音色もいいですね。

星の思い出は昔、小さな町の公園に、夜になるとクラス中で
集まって星を観察したものでした。熱く語る若い先生の気持ちが
子供心にジーンと伝わってきたのを思い出します。

今は都会に住んでいるのですが、東の外れの僻地です・・・
南方のネオンの明るさをよそに、ここは満天の星を眺めることができます。

by kasumi (2010-01-31 21:44) 

ぼんぼちぼちぼち

マイルス・ディビスを流したとたん
あっしの頭から降るフケが 冬の夜空のミルキーウェイに変わりやした。
by ぼんぼちぼちぼち (2010-02-01 17:49) 

空兵ーS

kasumiさん
こんばんは

アニタ・オディの歌は、マイルスの演奏の曲とは
同じと思えないほど楽しい仕上がりですね。
この曲の歌をとりあげたのは、
シナトラだったそうです。

星を見るのは好きですが、天体はさっぱりで
オリオンとかカシオペア、北斗七星と言った
ポピュラーなものしかわかりません。

北海道も、ひときわ星がきれいそうですね。
わたしはまだ冬の北海道に行ったことがないので、
見たことがありませんが、
半端な寒さではない夜空の星は、
どんな風に瞬いているのかと思います。
by 空兵ーS (2010-02-01 21:07) 

空兵ーS

ぼんぼちぼちぼちさん
こんばんは

天の川というと、七夕を連想しがちですが
ミルキーウェイと言うと、しゃれて聞こえますね。
今夜は雪で、星はおがめそうにありません。
by 空兵ーS (2010-02-01 21:10) 

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