アール・ファーザー・ハインズ [音楽(ジャズ)]
1974年12月15日、有楽町駅前にある読売ホールへアール・ハインズのコンサートを聞きに行きました。いつもコンサートは一人で行くのに、このときは珍しく友人satoと一緒でした。ふだんは名古屋にいる彼とどうして一緒に行くことになったのか、かなり昔のことで経緯は忘れてしまいました。
アール・“ファーザ”・ハインズ(1905~1983)は1972年に初来日を果たしています。私達が行った時が2度目の来日でした。1905年12月生まれですから、ほぼ69歳だったんですね。
年齢を感じさせない精力的なステージでした。ラグタイムとかブルース、ストライド・ピアノに根ざしたそのピアノスタイルは、1970年代には少し古さを感じさせましたが、明確で明るく力強いタッチが印象的でした。
彼の奏法はトランペット・スタイルと言われ、スイング時代の多くのピアニストたちに大きな影響を与えたのだそうです。
ジャズピアノの父と言われ、伝説的存在であるにもかかわらず、そのステージは和やかでかつ、エンターティナーに徹したものでした。
一曲ごとにお辞儀をし白い歯を見せて笑顔を振りまきます。その様子がどことなくサッチモに似ていると思ったら、彼はルイ・アームストロングの楽団にいたことがあり、一緒にレコーディングした名演が残っているんだそうです。
日本のクラリネットの第一人者、北村英治氏がゲスト参加し、このチラシの裏面に「来日によせて」という文を寄稿しています。
いろいろ趣向を凝らして楽しませてくれたコンサートでしたが、一番強烈に覚えているのが、休憩直後の後半でした。ピアノトリオのはずが突然、どこからか張りのある女性の歌声が会場に響き渡りました。
驚いて辺りを見回すと他の観客が後ろを向いています。慌てて振り返って見ると、郵便貯金ホールより狭い読売ホールの最後列の方から、長身のドレス姿の女性が、マイク片手に歌いながら、通路をステージに向かって歩いてきました。
張りのあるすごくよく通る声でした。チラシを見るとマーバ・ジョスィー(vo)とクレジットされています。歌唱力抜群ですが、聞いたことがない名前です。
ステージに上がって歌う彼女のハンドマイクの調子が悪くて、声がとぎれとぎれになりました。するとそれまで笑顔で彼女を見やっていたアール・ハインズが、自分のピアノの前に立っているスタンドマイクからマイクを引きちぎるようにはずして、彼女に渡しました。
おかげで彼女は堂々と声を張り上げ、歌うことが出来ました。客席は女性シンガーの粋な登場の仕方と、そのすばらしい歌声に拍手喝采でした。
ただ、これほどの歌唱力でも無名なのかと、妙な感心をしました。たぶん、アメリカにはこれくらいの歌唱力の無名歌手がごまんといるんだろうなとsatoと二人で納得したのでした。
その後、マーバ・ジョスイの名前は注目していたにもかかわらず、聞くことはありませんでした。アール・ハインズに抜擢されて来日出来たのに、残念ながら成功できなかったようです。
ホールで開かれることが多い日本のジャズ・コンサートはどうしても改まりがちですが、アール・ハインズのコンサートは、気取らずアットホームで楽しいものでした。
satoは、これと言った感想を漏らしませんでしたが、表情は満足そうでした。ただ、アール・ハインズの演奏スタイルが彼には古すぎたのか、「次は、マッコイ・タイナーをS席で聞くぞ」と張り切って名古屋に帰っていきました。
その後、satoさんはお元気なんですか? 私には学生時代、
いつもつるんでライヴを観に行った友人がいたんですが、
その義理堅い奴が、ここのところ音信不通なんですよ。
元気なら・それで良いのですが・・・。
by yukky_z (2010-05-07 20:34)
アール・ハインズ懐かしい名前です。
ジャズクラブでお酒片手に聴いてみたかったですね。
by kurakichi (2010-05-07 20:48)
チラシをのこしておられるとは すばらしい!
by しばちゃん2cv (2010-05-07 21:41)
アール・ハインズのレコードは持っていませんが、
しっかり名前は覚えています。
多分、ジャズ喫茶で聴いていたんですね。
スイング・ジャズ、懐かしく、心地よく響いてきます。
by stone-9 (2010-05-07 22:05)
Jazzは静かに聴くものだ・・・
こんな概念がありましたが、
レコードを手に入れてからは、
気楽に聴けばいいんだと分かりました。
「音楽」ですものね。
by たいへー (2010-05-08 09:08)
若い頃ライブに一緒する人結構選んでしまいましたが、今は家内以外ならすべてOKです^^;
終演後の楽しみが家内だと・・・でもたまに行きます!
by クンツ (2010-05-08 16:40)
読売ホールのステージには私も十数回は立ったことがあります。
小振りのホールですが、ジャズをやるには手頃なホールでした
by 駅員3 (2010-05-08 19:52)
yukky_zさん
こんばんは
彼は元気ですよ。去年の秋、わざわざ北海道から我が家を訪ねてくれ旧交を温めることができました。
音信不通のお友達は心配ですね。便りがないのは無事な証拠ともいいますけれど、たまには連絡欲しいですね。
私も長い間にいろんな人達と出会いましたが、今は互いに連絡先もわからなくなって、今頃どうしているのかなぁと思う人たちがいます。
by 空兵 (2010-05-08 20:38)
kurakichiさん
こんばんは
当時来日ミュージシャンの中には、コンサートの合間にジャズ喫茶などでライブ演奏された方もあったのですが、情報に疎かった私は、チケット売り場で発売されるコンサートしか経験できませんでした。
ジャズ喫茶で催された日本人ジャズメンのライブは、いくつか聞くことができましたが。
by 空兵 (2010-05-08 21:06)
しばちゃん2cvさん
こんばんは
記念になると思って、行ったコンサートのチラシやチケットの半券、お金もないのにパンフレットなども買って残してましたが、なぜか、このアール・ハインズのコンサートだけは、チラシしか残ってませんでした。
by 空兵 (2010-05-08 21:09)
stone-9さん
こんばんは
私もコンサートに行った割には、そんなにたくさんのアール・ハインズのレコードを持っているわけではありません。アート・テイタムとか歴史的に価値があるミュージシャンの演奏は、スタイルが古かったり音が悪かったりで、あまり聞けてません。
YouTubeのアール・ハインズは、少し太っていますが、立ち上がって挨拶をする様は、私がコンサートで見たのと同じですね。
by 空兵 (2010-05-08 21:23)
たいへーさん
こんばんは
もともと、酒場などでジャズは演奏されてきました。コンサート会場などで聴衆に聞くことを強いる性質のものではなかったのが、発展していくに連れ、聴衆の耳をひきつけるようになったんでしょうね。
構えていても聞こえてこないときは聞こえてこないし、リラックスしていても聞こえてくるときは聞こえてきますね。共感、共鳴・・・ミュージシャンがそのプレイに全力を尽くして我々に贈ってくれるプレゼントですね。
by 空兵 (2010-05-08 21:36)
クンツさん
こんばんは
そいういう楽しみもありますね。コンサートや芝居のはねたあとなど、同じ空間を共有し、その感想を語り合うなどというのは、極上のひとときですね。なかなかそんな贅沢な場面には遭遇する機会がありませんでしたが。
by 空兵 (2010-05-08 21:39)
駅員3さん
こんばんは
よみうりホールの客席ではなく、ステージに立たれた思いでをお持ちとは驚きです。確かに、ホールとしてはこじんまりしていて、小編成のジャズなどを楽しむにはいい場所ですね。
by 空兵 (2010-05-08 21:41)
モダンの父とでも言えば良いのか、パップ派の私には
とても新鮮に聞こえるフレーズばかりです。
40年代当時のJAZZレコード聴くと面影が有りますね。
フィニアスやオスカー辺りも何処か似ている気がしますが・・・。
by ベルベット (2010-05-09 08:49)
マーバ・ジョスィーはマーヴァ・ジョシー、MARVA JOSIEでしょうか? 1つめのURLは、Earl " Fatha" Hines With Marva Josieで検索してHITしました。2つめ3つめはMARVA JOSIEで。間違ってたらごめんなさいっ。
http://www.siestarecord.com/search.php?Mode=d&Type=w&SearchStr=Earl+Hines
http://www.stereo-records.com/detail.php?itemCd=8964
http://itunes.apple.com/jp/album/forever/id327836274
by FUCKINTOSH66 (2010-05-09 13:01)
ベルベットさん
こんばんは
アール・ハインズの楽団に若き日のチャーリー・パーカーやガレスピーがいたそうで、そこでバップの芽が育まれていたのかもしれませんね。
彼の古い演奏では、スコット・ジョプリンでおなじみのラグタイムピアノに共通したものを感じます。古いけれど、明快で気持ちの良いテンポで演奏されてます。
by 空兵 (2010-05-09 20:35)
FUCKINTOSH66さん
こんばんは
私が知らなかっただけでMARVA JOSIEはちゃんと歌手として活躍していたんですね。YouTubeでも何曲かヒットしました。彼女に対して失礼なことを言ってしまいました。
さっそく、アマゾンでアール・ハインズとの共演のCD(ほんとはLPが欲しかった)発注しました。アメリカからの輸入になるそうです。
他のミュージシャンでも、カタカナで上手くヒットしないときは、アルファベットで検索しているのですが、マーバ・ジョスィーのスペルがわからなかったと言うこともありますが、何となく自分の中で決め込んでいたみたいです。
教えて頂いてありがとうございました。
by 空兵 (2010-05-09 20:43)
アール・ハインズを流したとたん 手にしていた健康麦茶がバーボンに変わりやした♪
by ぼんぼちぼちぼち (2010-05-09 21:22)
ぼんぼちぼちぼちさん
こんばんは
麦茶とバーボン、色は一緒ですね。
今は知りませんが、スパゲッティ、30年ほど前は、
東京(もしくは関東)はナポリタン
関西は、イタリアンと呼んでいたようです。
by 空兵 (2010-05-09 21:31)