「死刑台のエレベーター」 [音楽(ジャズ)]
何時までも続く残暑に、”お彼岸というのに、今年はまだ彼岸花が咲かない”と、妻がこぼしておりました。言われてみると確かに椿の木の下に蕾が幾つかあるだけでした。
昨日、雨が降って一気に気温が下がりました。椿の木の下の彼岸花は蕾を少しふくらませただけでしたが、反対側の南天の下に真っ赤な彼岸花が数輪咲いていました。去年より一週間遅い開花です。
桜の木に大量発生した毛虫を取りに、山からやってきたシジュウカラ
結構なスピードで飛んでいたナミアゲハ、南天の葉に止まってくれました。
こんな裏庭に、秋の到来を告げるモズのたか鳴きが聞こえるようになってきました。今年は梅雨明けの時もそうでしたが、季節の移り変わりが日付で区切ったように鮮明です。
さて、ようやく秋です。待ち焦がれました。これから秋の夜長、音楽、読書、映画鑑賞です。そして今夜は、マイルス・デイビスが手がけた映画音楽「死刑台のエレベーター」です。
ジャズ初心者にはとっつきやすいレコードでした。ミュートのきいた、リリシズム溢れるマイルスのトランペットは、映画を見ていない私にも物語の緊迫感が伝わってくるものでした。
このレコードには、いろんなジャケットデザインがあるようで、私が買ったのは日本フォノグラムが1974年発売したもので、1,300円の廉価盤でした。
こちらが、今流通しているCDのジャケット表紙です。DVDと同じデザインを採用しています。他にも別のデザインのジャケットを見た記憶があります。
私のレコードは、サウンドトラックのせいか、音は今ひとつです。このころのマイルス・デイビスのレコードと比べると、少しこもったような、幕の向こうから聞こえてくるような感じがあります。
久しぶりに「死刑台のエレベーター」に針をおろしてみて、今更ながら、この映画を見ていないことに気づきました。私がよく映画を見ていた1970年代にはかつての名作がリバイバル上映されていましたが、1957年作のフランス映画であるこの作品の上映には巡りあえませんでした。
しかし、今は、便利な時代です。近くのレンタル店の棚を探してみたら、古い名作のコーナー、音楽DVDにもなくて、サスペンスのコーナーにありました。それで今まで気づかなかったのかもしれませんが、それにしても今まで探してみようと思わなかったこと事態、不思議です。
画面はモノクロです。フランス、ヌーベルバーグの旗手、ルイ・マル監督の処女作にして出世作。同監督の作品としては「好奇心」とか「ルシアンの青春」などのタイトルが記憶にありますが、見たのかどうか忘れてしまいました。
映画はいきなりカララ婦人、ジャンヌ・モローの美しい顔のアップで始まります。彼女は受話器越しにジュテーム、ジュテームとささやきます。ラストシーンを計算した見事な導入です。
全編は1時間余りの短いものですが、無駄のない緊張感に満ちていました。このへん、黒澤映画でも感じることと共通しています。白黒画面が醸しだす独特の雰囲気でしょうか。それともこの時代の映画作りのなせる技でしょうか。
初めて見る映画だったせいか、演奏よりストーリーにぐんぐんひきつけられて見てしまいました。2転、3転、ラストで真実が鮮やかに浮かび上がります。文字通り浮かび上がるのです。
映画を見終わってから、改めてレコードを聞いてみると、スリル満点の演奏、その見事さがさらにわかる気がします。眼を瞑って耳を傾けていると、映画のシーンが蘇ってきます。
このころのマイルス五重奏団というと、ジョン・コルトレーンを擁したものすごいメンバーだったのですが、このサウンドトラックは契約の関係で、マイルスだけが参加し、あとは急遽、フランスで組まれたものだそうです。メンバーの中では当時パリ在住だったケニー・クラークが有名です。
最近、さっぱりフランス映画の話題を聞きませんが、このころのフランス映画は格好良くて、洒落ていて、情緒たっぷり、そしてラストの観客をあっと言わせる仕掛けなど見事なものがありました。アラン・ドロン主演の「太陽がいっぱい」のラストも衝撃的でしたね。
私が借りたDVDは古いものらしく、音も映像も今ひとつでした。とくに音はかなり引っ込み気味で、いくら音が悪いと言っても、サウンドトラックのレコードのほうがずっと良かったですね。最近、この映画リマスター盤が出たそうで、下のYouTubeの動画はその予告編のようです。
これは主人公、ジュリアンがリノ・ヴァンチュラ扮するシェリエ警部に尋問を受けているところ。「YouTubeで見る」をクリックしてください。
この映画、あのロープや皮手袋、電話交換手、花屋、ナイフ、アベック、
色んな情景が映し出されます。
そして、ジャンヌ・モローのアルバムや、バルネ・ウィランのアルバムを
捜し求めた記憶が有ります。
嬉しいのは同じLP、CDを探し、今でも大切に保管しています。
録画のカセットも有ります。
by ベルベット (2010-09-24 22:34)
「マイルス デヴィス」というクレジットが・・・^^;
まだJazz初心者ですので、きっと馴染めると思います。
「バグズ グルーヴ」は落ち着いて聴いていられるのですが、
「マイルストーン」になると、まだ若干違和感が・・・^^;
奥が深いですなぁ。
by たいへー (2010-09-25 11:07)
この映画はマイルス・デイビスが聴けるので、当時まだ沢山あった、
2本立てか3本立ての映画館へ観に行きました。
ところが映画がに引き込まれて、
音楽どころではなかった記憶があります。
私がジャズを聴くきっかけになった、一曲かもしれません。
by stone-9 (2010-09-25 11:47)
わぉ、これは懐かしい。
買ってもらったばかりのラジカセでエアチェックしたものをよく聞いていました
by 駅員3 (2010-09-25 18:51)
ベルベットさん
こんばんは
時代的な違いもあって、古い鉛筆削りなどの小物に目が行ったり
1950年代にDPEのシステムが完備されていることとか
ストーリー以外にも気になることがありました。
おっしゃるとおり、印象に残るカットが多い映画ですね。
反対に、携帯電話やデジカメのある現代なら
どんなミステリーになったのだろうと気になったりもしました。
by そらへい (2010-09-25 20:51)
たいヘーさん
こんばんは
「マイルストーン」は後期のエレクトリックジャズに比べたら
まだまだ序の口ですね。
確かに情緒的なマイルスではありませんが、
あのリズミカルな出だし、何回も聞いているので違和感はないですね。
たいヘーさんも、何回か聞くうちなじんでくると思いますよ。
きっと。
by そらへい (2010-09-25 21:00)
stone-9さん
こんばんは
私もロードショーは稀でほとんどの映画は
名画座の2,3本立で見ましたね。
新宿、渋谷、あちこちにありました。
名作と知れば出来る限り観るようにしていたのですが
「死刑台のエレベーター」の上映には出会えませんでした。
古い映画には音楽が印象的な映画が多くて、ジャズでありませんが
同じモノクロで「第三の男」「道」などがありましたね。
by そらへい (2010-09-25 21:08)
駅員3さん
こんばんは
私もレコード棚から引っ張り出したのは久しぶりでした。
おかげで、見落としていた映画を見ることができてよかったです。
この歳になると、見ないでは死ねない映画のリストを
作っておく必要がありますね(笑)
by そらへい (2010-09-25 21:16)
こんばんは
すっかり涼しくなりましたね・・
それでも音響機器の周りは暑いですね・・?
もう少し寒くなって丁度いいくらいかもしれません。
太陽がいっぱいのラスト!
死者の怨念でしょうか?、衝撃でした~
by Studio-Oz (2010-09-25 23:16)
Studio-Ozさん
こんばんは
夜更けになると寒いくらいです。
そろそろ真空管アンプに火を入れても良さそうです。
今までトランジスタのシステムでカートリッジの音色を比べていましたが
今度は、真空管アンプで聞き比べてみようと思います。
昔の映画に比べると、最近の映画は迫力ありますが
大味なのが多いですね。
by そらへい (2010-09-25 23:27)
彼岸花の写真、私もようやく見つけましたよ。
by y-tanaka (2010-09-26 06:56)
あっしがマイルスを知ったきっかけがこの作品でやす\(◎o◎)/
by ぼんぼちぼちぼち (2010-09-26 19:58)
y-tanakaさん
こんばんは
この間は、夜の彼岸花でしたが、
今後はもっとたくさんの彼岸花の写真が出てくるのでしょうね。
by そらへい (2010-09-26 22:35)
ぼんぼちぼちぼちさん
こんばんは
そうでしたか。世間一般にマイルスの名前を知らしめるには
この手が一番だったかもしれませんね。
この時代は、ジャズが映画音楽に積極的に取り入れられた時代だったようで、他にもジョン・ルイスの「大運河」やモンク、D・ジョーダンの「危険な関係」などが有名ですね。
by そらへい (2010-09-26 22:45)
そういえば彼岸の墓参りに行った時、彼岸花を見掛け
ませんでした。こんなことは初めての様な気がします。
これも猛暑の影響なんですかね?
by yukky_z (2010-09-27 02:04)
yukky_zさん
こんばんは
いつもは彼岸前に咲く彼岸花ですが
今年は今頃、満開を迎えています。
田圃の畦道が真っ赤に燃えていますよ。
あちこちに影響を与えて、長い夏が終わって
いよいよ音楽の秋ですね。
by そらへい (2010-09-27 21:12)
ヌーベルバーグとジャズはとてもフィットしていましたね。
「死刑台のエレベーター」リメイク版が公開されますが、ジャンヌ・モローが吉瀬美津子というのはちょっとあんまりな気が・・。
RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2010-09-27 23:42)
末尾ルコ(アルベール)さん
こんばんは
偶然ですが、リメイク版が日本映画で公開されるんですね。
確かに、フローレンス役もそうですが、この映画の大きな特徴である
映画音楽はどうなるんでしょうね。
この名作をどのようにリメイクしてみせるのか、見てみたい気もしますね。
by そらへい (2010-09-28 20:46)
これは映画も音源も何度も見聴きしました〜♪もちろんビデオやCDでですけどね。なにもかもがカッコいい!と興奮したのをよく覚えています。
by FUCKINTOSH66 (2010-10-04 13:00)
FUCKINTOSH66さん
こんばんは
1957年、フランス、モノクロ
映像も演出も音楽も俳優も寡黙でストイック
後世の我々にもそのかっこ良さがビシビシ伝わってきますね。
by そらへい (2010-10-04 21:27)