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小春日和 [音楽(ジャズ)]

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  朝、霜がおり始めました。まだ地面が白く覆われるほどひどくはありませんが、車のフロントガラスに霜が凍てついて、すぐに発進できないことがあります。そんな風に冷え込んだ朝は、昼間のお天気が良くなる事が多いようです。

 11月から12月、晩秋から初冬にかけて、移動性高気圧に覆われた、穏やかで暖かい春のようなぽかぽか陽気のことを「小春日和」と言います。

 

ブルー・ヘイズ

ブルー・ヘイズ

  • アーティスト: マイルス・デイヴィス,パーシー・ヒース,ホレス・シルバー,チャールズ・ミンガス,ジョン・ルイス,デイブ・シルドクラウト,アート・ブレイキー,マックス・ローチ,ケニー・クラーク
  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 1999/12/16
  • メディア: CD

 マイルス・デイビス「ブルー・ヘイズ」です。このレコードは若いときに買ったものですが、ここでのマイルスの演奏を聞くと、私はなぜか「小春日和」という言葉を連想してしまいます。

 若い頃の少し頼りなげなマイルスも、よく親しんだ「カインド・オブ・ブルー」の頃の痺れるようなミュートの効いた厳しいマイルスもここにはなくて、気持ちよさそうにのびのび吹いているマイルスがいます。まるで厳しい冬の寒さの中で、突然ぽかぽかと暖かい日に出会ったかのようです。

 ライナーノートにある岩浪洋三さんの解説によると、このレコードの頃のマイルスは、スランプからちょうど抜け出たところだったそうです。実際、マイルスの自叙伝を読むと、この頃のマイルスは、麻薬から逃れようと、藻掻き苦しんでいる時期で、このレコーディングの頃は回復に向かっていたようです。

───1952年もやっぱりひどい年で、49年をピークに、だんだん悪くなっていくようだった。初めて、自分自身、それに能力やテクニックに疑問を抱きはじめていた。オレは本当に音楽でやっていけるんだろうか、そんなふうに自分を疑いはじめだしたんだ。

 (この後、白人ミュージシャンびいきの白人批評家への批判が続きます)

───1953には、もう一つレコーディングし、「バードランド」に出ていたディズのバンドで、彼の代わりに演奏したこともあった。「バードランド」では二晩やって、それからプレスティッジに録音した。この頃は、かなり定期的に演奏していたから、唇の状態も良かった。レコーディングは、オレにマックス、ジョン・ルイス、パーシーというカルテットだった。オレがソロイストの中心だったから、自分自身の演奏を自由に、思い切りやった。おまけに、たしか<スムーチ>だったと思うが、チャ-ルス・ミンガスがピアノを弾いたりもした。この時、全員がすばらしい演奏だった。

マイルス・デイビス自叙伝〈1〉 (宝島社文庫)

 

マイルス・デイビス自叙伝〈1〉 (宝島社文庫)

  • 作者: マイルス デイビス
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 1999/12
  • メディア: 文庫

 

 LP「ブルー・ヘイズ」は1953年5月19日、1954年3月10日、1954年4月3日の録音になっています。それぞれクインテットのメンバーも違います。

 マイルス自身が言っているように、1953年5月19日録音のものがいちばん快調で、私の小春日和の印象もこの演奏から来ています。曲目は「ホエン・ライツ・ア・ロウ」「チューン・アップ」「マイルス・アヘッド」「スムーチ」です。メンバーは、マイルス・デイビス(tp)、ジョン・ルイス(p)、「スムーチ」のみ(p)チャーリー・ミンガス、パーシー・ヒース(b)、マックス・ローチ(ds)

 1954年3月10日録音の時、彼の自叙伝によると、マイルスはトラペットを失ってしまって、アート・ファーマーのを借りたんだそうです。そう言われてから聞くと、確かにマイルスのオープンの音色はアート・ファーマーに似て聞こえます。「フォア」「オールド・ディビル・ムーン」「ブルー・ヘイズ」が録音されてます。メンバーは(p)がホレス・シルバー、(ds)がアート・ブレーキーに変わっています。

───オレは奴(ホレス・シルバー)のピアノが好きだった。あの頃すごく気に入っていた。ファンキーな雰囲気を持っていた。彼がオレの演奏のバックで燃え上がり、しかもアートが叩いていたから、おちおちしていられないんだ。勢いに押されないように、しっかり吹かなきゃダメだった。───

 1954年4月3日録音のものは、「4月の思い出」だけで、メンバーは3月のメンバーにディヴィ・シルクラウト(as)が加わり、(ds)がケニー・クラークに変わってます。ブラッシュが重要で、静かなブラッシュが欲しかったのでケニー・クラークを起用したのだそうです。

 1954年の4月末に、マイルスはあの「ウォーキン」を録音しています。マイルスは自叙伝の中で、「ウォーキン」が彼の人生と経歴のすべてをすっかり変えてしまったと言っています。彼にとって、重要なターニングポイントになるアルバムだったんですね。

 その後プレステッジでの有名なマラソンセッションへと続いていくのだと思います。

 


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クンツ

こんにちは、気持ちよく聴いてたらナイス2番に^^。持っていないのでSHM-CDにて購入ですかね^^。外寒いですけどお月様綺麗ですね。
こんな夜に聴くMilesのアルバム♪は・・・。
by クンツ (2009-12-04 20:59) 

たいへー

好きなアーティストでも、演奏には波がありますね。
いつでも最高だと良いのですが、
そこは人間ですからね。
また、そういう波も楽しみではあります。


by たいへー (2009-12-05 08:17) 

駅員3

私はジャズにふれたのは20代のはじめでした。
長らくクラシックをやってきた私には、ジャズは理解できませんでしたが、自らジャズを演奏するようになり、大好きな音楽になりましま。
以来ジャズは聴くより演奏する方が楽しかったのですが、自ら楽器を手放し、ずっと物足りなさを感じていました。
最近空兵さんのblogを知り、この歳になって初めて、自分なりにジャズのよさを理解出来たようなきがします。
クラシックもそうですが、ジャズのほうがより目の前でプレーヤーと一体感を得て、音楽そのものに自我を埋没させられるんですね。
今までは「自分だったらこうフェイクするのに」などと、批評家的な聞き方だったから、演奏しているほうが面白かったのだと思います。
空兵さんに感謝です!
by 駅員3 (2009-12-05 09:49) 

FUCKINTOSH66

ああ、ほんとだっ、小春日和って言葉と情景がピッタリな音ですね♪ マイルス、こんなぽかぽかっとした優しい音も出す人だったんですね。
by FUCKINTOSH66 (2009-12-05 11:48) 

kasumi

まさに、小春日和の暖かさが伝わる風景ですね。
山並みの紅葉、近づけば近づくほど紅く鮮やかに覆われているんでしょうね♪

マイルスの「ブルー・ヘイズ」は、唯一もっていないアルバムです。
Someday My Prince Will Comeのような明るいテンポの曲ですね。

彼もまた人種的偏見に苦しんだ一人でしたが、
変貌と疾走を続けるマイルスの原動力でもあったかもしれませんね。

by kasumi (2009-12-05 12:36) 

tempo

Prestigeのマイルズはどれも良いですね、Columbia時代よりも好きですね。コレはCDで持っていたと思うので今度聴いてみます。
by tempo (2009-12-05 19:10) 

c-yukky_z

今年の秋は雨が多かったです。気温も寒暖の差が
広かったし。だから紅葉も綺麗なんでしょうね^^
by c-yukky_z (2009-12-05 19:37) 

ukim

やはりマイルスは定番ですね。(ブルー・ヘイズ、私も持っていなかった) 私もご多分に漏れず若い頃せっせとLPを買っていましたが、CDに移行してからレコードは奥にしまいこんでしまい、気に入ったものを買いなおす位ですね。ビッチェスブリュー以降はちょっと辛くてまったく持っていないけれど、昔からクラシックにすこし比重が傾いているのでギルエバンス編曲物はしみじみとします。心に深く入り込んできますね。ただこれらコロンビアレーベルは特にCDになって音がきつくて再生に苦労します。あ、あとライブも殆ど皆良いですね!!結局みな良いんだ(笑)
by ukim (2009-12-05 19:50) 

空兵ーS

クンツさん
こんばんは

2.3日前、満月でしたね。秋冬の月は冴えますね。
そんな月夜のマイルスは、やはりミュートの効いた銀色の音色が似合うような気がします。
by 空兵ーS (2009-12-05 23:02) 

空兵ーS

たいへーさん
こんばんは

当然ミュージシャンも人間ですから、その作品が貧乏や恋愛
調子の浮き沈み、年齢などいろいろな要素で変化していくのを見るのも面白いですね。
by 空兵ーS (2009-12-05 23:06) 

空兵ーS

駅員3さん
こんばんは

私はジャズもクラシックも聞くことしかできないので、
演奏される方は無条件に尊敬してしまいますね。
音楽の理論とか、専門的なことが全然わかりません。
その分、感覚を大事にして聞くように心がけてはいるのですが。
そういう意味では、多少乱暴ではありますが
私にとってはジャズもクラシックも同じなのです。
感覚に訴えてくるもの、心に響くものであれば、いっそ歌謡曲でも
ポピュラーでも、映画音楽でもいいのです。
確かに、音楽家が羨ましく見えるのは、
演奏中は音楽に没入しているところですね。
by 空兵ーS (2009-12-05 23:14) 

空兵ーS

FUCKINTOSH66さん
こんばんは

そういえば、F66さんの初めの頃の記事に
「マイルスな気分」という言葉がありましたね。
このマイルスはどのころをさしたんでしょうね。
たぶん後期、エレクトリックマイルスかな?
「ブルー・ヘイズ」の頃のマイルスは
まだ若干25.6歳でした。
by 空兵ーS (2009-12-05 23:21) 

空兵ーS

kasumiさん
こんばんは

このアルバム「ブルー・ヘイズ」は、マイルスの中では
マイナーなアルバムなんでしょうね。
あまり紹介されているのを見たことがありません。
まだマイルスを集め切れていない若い私が
なぜこのレコードを買ったのか、不思議です。
当時は、やはりもっとわかりやすい、サムシング・エルスとかカインド・オブ・ブルーの方に惹かれていましたね。
マイルスの白人嫌いは有名ですね。
確かに変貌しながら疾走していった人でしたね。
by 空兵ーS (2009-12-05 23:26) 

空兵ーS

tempoさん
こんばんは
 
どのマイルスも良いのでしょうが、やはりPrestige時代は親しみやすいですよね。わかりやすいというか。
私がコンサートに行ったときは、もうエレクトリックでした。
この頃のレコードは一枚あるきりです。
by 空兵ーS (2009-12-05 23:29) 

空兵ーS

c-yukky_zさん
こんばんは

確かに雨の多い秋でしたね。
紅葉も私達の家の周りはもう一つだったのですが
山肌全体は、きれいに赤く染まってきました。
暖かい秋でしたが、そろそろ寒くなってくるのでしょうか。
by 空兵ーS (2009-12-05 23:32) 

空兵ーS

ukimさん
こんばんは

「ブルー・ヘイズ」聞き直してみて、新しい発見でした。
地味な作品に案外面白い発見があるのかも知れませんね。
とは言え、私もマイルス、すべて持っているわけではなく後年のはほとんど持ってませんし、アコーステックなものでもライブものは少ないです。
マイルスはレコードが多いので集めるのが大変です。
もちろん集めるだけでなく、聞かないと意味がありませんしね。
持っていない、聞いたことがないレコードがあると言うことは
まだまだこれから新しい音楽に出会えると言うことで
これから先、まだまだ楽しみがたくさんありそうです。
by 空兵ーS (2009-12-05 23:43) 

なちゃ

帝王マイルスも人の子だったんですね
by なちゃ (2009-12-07 09:07) 

ぼんぼちぼちぼち

ブルーヘイズを流したとたん
すすっていた 遅い朝のおかゆが、オートミールに変わりやした。

ジャケ写も美しいでやすねーー
by ぼんぼちぼちぼち (2009-12-07 11:11) 

ukim

空兵さんに火をつけられ(?)、天気が良いというのに意を決してレコード掘り出しを決意。おかげで今日は腰痛が...。 「ブルーヘイズ」持ってました。(マイルスのプレステッジレーベルは12枚出てきました) ついでになつかしいものも引っ張り出して、一日中レコード三昧。 おまけに珠にレコードをかけると針の心配が頭をもたげ始め、夜はオークションで針探しです。スペインから安い針を購入(テクニカの旧いモノラルカートリッジです。昔はいろいろMCも持っていましたが、針交換の手間が面倒で全部手放してしまいました。これは民放各局で使われていた所為もあってバランスがよく、今ではこれで充分です)してしまったのですが、これは余計だったかも。とにかく耳がいっぱいになった一日でした。
by ukim (2009-12-07 11:44) 

空兵ーS

なちゃさん
こんばんは

それ故に音楽に深みを増したんでしょうね。
「ブルー・ヘイズ」には、帝王になる前の
人間マイルスが出ています。
by 空兵ーS (2009-12-07 19:43) 

空兵ーS

ぼんぼちぼちぼちさん
こんばんは

「げんこつやまのたぬきさん」を歌ったら
裏山の無数の枯葉がお札にならないでしょうか。

そう言えば、プレステッジのマイルスのアルバムジャケットは
どれもしゃれてますね。
by 空兵ーS (2009-12-07 19:55) 

空兵ーS

ukimさん
こんばんは

それは大仕事でしたね。
古いアルバムをめくるような懐かしさでしょうか。
思い出とともに、いろいろ懐かしいものが出てきたんでしょうね。
一日中のレコード三昧は羨ましいですね。
耳を通して、心がいっぱいになったのではないでしょうか。
それにしてもプレステッジのマイルス12枚とは
たくさんお宝が眠っていましたね。
久し振りにレコードかけると、針先とかカートリッジが心配になりますが、針は、案外消耗しないものらしいですね。
MCのモノラルは音の安定感も抜群、スクラッチも少なくて最高です。
by 空兵ーS (2009-12-07 20:05) 

ビアンカ

ご訪問 & nice ありがとうございました。
やっと更新しましたので、お時間ありましたら遊びに来て下さい。
宜しく、お願い致します。
by ビアンカ (2009-12-09 13:44) 

ukim

スキャンダイナ、三回も流れてしまいました。潤沢に金額を吊り上げる気がないので、ぼちぼちですが次から次に出てくるのは如何に売れたかの証左でしょう。(後から出るたびに程度がよく見えるのはなぜ?)

それより昨日ヤフオクでマレーネディートリヒ二枚組50曲を¥600!で落手しました。まだまだ音楽は終着点に到達しませんね。人の一生を僅かな手立てで共有すること、すばらしいひと時をみなさまとお付き合い出来る世もまた快哉を叫びたい。 それにしてもドイツ語をこんなに情感たっぷりに歌えるのもすごいですね。http://www.youtube.com/watch?v=d-BLoI-0aFc
by ukim (2009-12-09 17:15) 

空兵ーS

ビアンカさん
こんばんは

外国の風景、かっこいいホテルとドリームカー
どれもすばらしいですね。
by 空兵ーS (2009-12-09 22:04) 

空兵ーS

ukimさん
こんばんは

スキャンダイナ、そんなに次々とヤフオクに登場しているんですか。かなり渋い、知る人ぞ知ると言うスピーカーですが、その昔はちょっとしたベストセラーだったのだと思います。

マレーネ・デートリッヒというと、加藤登紀子さんも歌っていた『リリー・マルレーン』を思い出しますね。私の頭の中では、「愛の賛歌」のエディット・ピアフとイメージがごっちゃになっているところがあります。
それにしても歌をきくと、ドイツ語は重みがありますね。
私も某中古店で、かつての名盤が300円で売っているのを見ると、つい手を出したくなることがあります。ジャズがなくてポピュラーばかりなのですが、中に懐かしいのがあったりします。
by 空兵ーS (2009-12-09 22:33) 

yukky_z

こんばんは~♪
「ニックネームとアイコン」をちょこっとだけ
変更しましたので、一応お知らせしておきます。
では今後とも、宜しくお願いします^^

by yukky_z (2009-12-09 22:53) 

空兵ーS

yukky_zさん
こんばんは

ニックネーム、少し文字が減っただけなのに
すごくスッキリしてわかりやすくなりましたね。
プロフィールの画像はビートルズですか?
こちらこそ、これからもよろしくお願いします。
by 空兵ーS (2009-12-10 21:43) 

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