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ALS~タカサゴユリ [その他]

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 昼間はまだまだ暑い日が続いています。我が家のアサガオ、今夏の強烈な日差しを遮るには少し荷が重かったようです。

 夜は窓は開け放して網戸です。低く音楽を鳴らしていても、窓の向こうから虫の音が聞こえるようになってきました。

 雨も少なくて、雷鳴が遠くで聞こえるばかり。今年の雨は降り出すと一気に降るのに降らないととことん降らないようです。

 盛夏より盆過ぎの今頃の残暑が精神的にも肉体的にも堪える気がします。他の方のブログを拝見していても、更新を休まれている方を時々お見かけします。

 私は夏に入る前から今年の夏は更新を休もうかなと思案していたのですが、結局ここまで毎週金曜になるとアップしてきました。とりあえず、週刊金曜日を守っているだけで中身のクォリティについてはクエスチョンだらけなんですが。

 

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 ロンドンオリンピックが始まって間もない8月2日のこと、読売新聞と京都新聞のトップは、オリンピックの記事や政治の記事を押しのけて、ips細胞を利用したALSの治療薬候補の話題を取り上げていました。

 素人なので詳しいことはわからないのですが、記事は難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者の皮膚から細胞をとり、ips細胞から運動神経の細胞を作って、薬の候補となる化合物を見つけることに京都大学のチームが成功したと言うものでした。

 ALSというのは、10万人に1人という原因不明の難病です。全身の筋肉が衰えて最終的には呼吸を司る肺の筋肉の衰えで死に至るという恐ろしい病気です。もちろん治療法は今まで解明されていません。

 この病気で有名な人としては、大リーガーのルー・ゲーリックがいます。ALSのことを別名ルー・ゲーリック病とも言うそうです。日本人では、クイズダービーでおなじみの篠沢秀夫さんが現在闘病中です。

 発病は4.50代に多く、男性の方が多いそうです。発病すると3.5年で死に至るそうですが、いろいろなケースがあるようです。多くの方が人工呼吸器を付けて延命を図っておられます。

 私が何故この記事に注目したかというと、母がALS患者だったからです。母の場合は病気の進行が緩慢で数十年にわたりました。初めはそうとはわからず、田舎のことですから中風などと思っていたようです。

 血圧も高くないと言うことでいろいろな病院で見てもらい、運動神経を冒されていると言うことから一時は脊髄小脳変性症などという病名もいただいていたようですが、最終的にALSに落ち着きました。

 当時非常に珍しい病気と言うことで、奇しくも今回と同じ京都大学付属病院で調べさせて欲しいと言うことで、父に付き添われて数ヶ月入院していたこともありました。そのときの若い先生が今回のチームにおられるかどうかは知りません。

 母の場合、病状が緩慢に進行したと言うと穏やかそうにも思えますが、実際は真綿で首を絞めるがごとく徐々に運動の自由を奪い、筋力を衰えさせ、最後は寝たきりになってしまうという過酷な病でした。

 意識はしっかりしているのですが、動くことはおろか自由にしゃべることもできないので、もどかしい思いをしていたと思います。近年になって、眼球の動きで文字を拾うコンピューターを利用した機械などが開発されたりしているようですが、母の時は看護婦さんが五十音配列の文字板を持って指さし、母の眼球の動きや瞬きで確認していました。

 母は患うまでは田んぼでも畑でも父よりたくさん働く丈夫な人でした。それだけにいっそう自由に動けないと言うことはつらかったろうと思います。ふらつくので得意の自転車にも乗れなくなり、やがて外では一人では歩くこともできず、行動は家の中限定。最後の5.6年は病院のベッドで、ALSと言う病のロープに縛り付けられていました。

 医者に「あなたの病気は治りませんよ」と何度も言われてどんな思いだったのか、私たちの前ではいつも楽天的な笑顔を見せてくれていたのが唯一救いでした。母と過ごした日々は、また別の機会に書けたらいいなぁと思っています。

 ただ母が亡くなる間際、呼吸の苦しさにそれまで自ら動こうとしなかった上半身が躍り上がるように大きく波打ったのには驚きました。そして、呼吸がとぎれて次第に息を引いていく時、眉間にあった皺が潮が引くようにきれいになくなっていきました。久しぶりに見た母の安らかで懐かしい寝顔でした。

 毎日そこにこびりついていたので気づかなかった眉間の皺、それが息を引き取るとともに消えたとき、今更のように母の苦しみを知った気がしました。

DSC_2603.JPG 母がお世話になったは病院はカトリック系の病院だったので、入院したときから宗教上の理由で人工呼吸器は付けませんと言われていました。

 我が家は仏教で宗派は浄土宗です。母はすでに五重相伝を受けて、戒名もいただいているのですが、このカトリック系の病院にお世話になるとき洗礼を受けました。洗礼名はマリアだったと思います。

 母が亡くなって、枕元の引き出しを片づけていると、このロザリオが出てきました。母の唯一の形見として今も私の机の引き出しにしまっています。

 

 

 

 

 

 京都大学の山中伸弥教授が発見したips細胞は、いろんな方面で期待されています。とくに難病に苦しめられている人たちにとっては、大きなよりどころとなっています。

 いつぞやあるテレビ番組で、筋肉が骨になるという難病を抱えた少年が、自分の身体を投げ出してips細胞に期待している様子が報じられていました。その番組を見ながらいずれALSも道が開けるのではと思っていたところ今回のニュースです。

 母が亡くなってもう20年あまりになるので、現在は少しは状況が良くなっているのかも知れませんが、もしips細胞のおかげで薬が開発されれば、母の無念、多くのALS患者の苦しい思いも報われる気がします。

 一日も早く薬が開発され一気に治癒へと進んで、この過酷な病から全ての患者が解放されること、平穏な日常と落ち着いた未来が与えられることを切に願います。

 

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 家の裏、石垣の間から背の高い草が一本生えていました。草刈りをしていた時、刈ろうとしましたが、もしやと思って残しておいたら、白い高砂百合が咲きました。


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song4u

そらへいさん、こんばんは。
更新をサボってばっかりのsong4uです。m(_)m
週イチの更新をキッチリと続けておられ、ただただ脱帽するばかり、
本当に尊敬のまなざしです。

>クイズダービーでおなじみの篠沢秀夫さん

いつだったでしょうか、テレビか雑誌でお見掛けした時は車椅子だった
ように思いました。イマイチお元気が無さそうにも見えました。
しかし、そらへいさん。
番組終了から20年、篠沢さんの出演終了からは既に24年が経過して
おりますよ。30歳未満の方は分からないんじゃないかなあ?(笑)
ちなみに篠沢教授のデータは、こんな風なんだそうですよ。(by wiki)

篠沢秀夫(学習院大学名誉教授)<1977年10月-1988年7月>
通算勝敗:1423勝2953敗、通算勝率:3割2分5厘

タカサゴユリ(だと思います)、うちにも咲いておりました。
その数、約20本。植えてもいないのに、一体どうなっているのか?
数は増加傾向にあるように思います。背が高いから目立ちますよね。
寿命が短いですよね。散って、もう2週間ぐらい経つでしょうか。
これで来年まで咲かないなんて、つくづく花も大変だなあと思います。
by song4u (2012-08-24 23:05) 

たいへー

20年前ですか。
今よりいろいろハードルが高かったでしょうから、大変でしたね。
よく「海面に顔をギリギリ出して浮かんでる状態」と比喩されますが、
最後はCO2中毒になって、苦しみから解放されたので、
安らかな顔でした。
本人はもちろん、家族の負担も大きい病気です。
父親は口からの発症でしたので、
進行は早いよとは言われてましたが、その通りでした。
ですが、最後まで歩けたので、まだ幸せだったでしょうね。
早く特効薬が完成して、治る病気になってもらいたい。
心の底から思います。
by たいへー (2012-08-25 10:35) 

ski

お母様お気の毒でした。
死んだときに眉間の皺が無くなるのは家も同じでした。
ALS恐ろしいですね、治療法の一端が見えたのは救いだと思います。
父も人工呼吸器や、胃瘻はしませんでした。
死ぬ間際の人は言葉を発せ無いことが多いと思いますし、死ぬ時の苦しみを和らげる医療がもっと進めばいいと思います。

by ski (2012-08-25 11:21) 

そらへい

song4uさん
こんにちは

言葉足らずでした。出来れば休んでメリハリ付けたかったのですが
金曜が来ると日課のようにただ更新してしまったことを反省しています。
更新に関していえば、不定期のほうがかえって難しい気もします。

篠沢秀夫さん、最近はテレビ露出もありませんでしたので
ALS闘病されていることさえ知りませんでした。
クイズダービー終了からもう20年ですか。
確かに30歳未満の方には通じませんが、
このブログ、そこまで若い人が覗いているか疑問です(笑)

それにしても篠沢さんの勝率凄いですね。
野球選手なら超一流です。

タカサゴユリ、今年は特によく見かける気がします。
いつも妻の実家に向かうときに通る峠道の両側にも群生しています。
お宅の庭に20本とは凄いですね。
我が家には今年やっと一本届きました。
来年からもっと増えてくれると嬉しいです。
by そらへい (2012-08-25 11:34) 

そらへい

たいへーさん
こんにちは

最近身内を亡くされた方には生々しい話題になってしまいました。
本文で書き落としましたが、死に至る病はどんな病気でも
当人にとっても家族にとっても過酷なものだと思います。
人ひとりが生きて死ぬ
そこには当人だけではなくて、
回りの人間も巻き込んだ色々なドラマがあって
それが繰り返されていくのだと思います。
by そらへい (2012-08-25 11:40) 

そらへい

skiさん
こんにちは

skiさんのお父上もそうでしたか。
私は、父の時は立ち会えず、母の時初めてだったので
今際の際の様子には正直驚きました。
難病にかぎらず、これからの高齢化社会
どんな週末を迎えるべきか
色々議論されていくのでしょうね。
by そらへい (2012-08-25 11:46) 

しばちゃん2cv

そうですか、お母さんもそうだし、周りの家族の方がご苦労なさったと思います。
白百合の花言葉は 純潔・威厳・無垢 だそうです。
ご冥福をお祈りします。
by しばちゃん2cv (2012-08-25 15:56) 

そらへい

しばちゃん2cvさん
こんにちは

ありがとうございます。
この世から病気が絶滅することはありえませし
どんな病もつらいものなのでしょうが
この病気はその中でも気の毒な病気の一つだと思います。
by そらへい (2012-08-25 17:32) 

Studio-Oz

こんにちは

気丈に振舞われるお母さんの姿をついつい想像して・・・
なんとも目頭が熱くなります。
きっと、そらへいさん達ご家族がいらしたから最後まで
頑張れたのではないかと・・・

世の中には色んな病があって困ったものなのですが
諦めない気持ち、大切だと思っています。。。
by Studio-Oz (2012-08-25 17:57) 

そらへい

Studio-Ozさん
こんばんは

なにかほんの小さなことを楽しみに生きていたのでしょうね。
孫に会わせることができて、それが唯一の救い
回らない舌で孫の名前を呼びながら
毎週会えるのを楽しみにしていました。

今はALSにかかっている患者さんにとって、今回の京大チームの
ニュースは暗闇のなかに光を見る思いだと思います。
早く実現することを祈るばかりです。


by そらへい (2012-08-25 19:01) 

cafelamama

眉間の皺が息を引き取るとともに消えた、という話に胸を打たれます。
息を引きとることで、その苦しみから解放されたんですね。
治療薬の開発が進んでいることは、いいニュースですが、
skiさんのコメントのように、
苦しみを和らげる医療が、もっと研究されないのだろうかと思います。
by cafelamama (2012-08-25 19:41) 

プリウス

そらへいさん、こんばんは!!

ガンで亡くなった、、母を思い出しました、、、闘病生活は苦しいはずなのに、
自分のことより、、家族の心配ばかりしていたのです、、。

最後まで、生きることを諦めていなかったのは、、、家族が心配だったからかも知れません。
・・・自分がそんな”親”として、生きて行けるかは、、、自信がありませんが、、。
by プリウス (2012-08-25 20:41) 

watmooi

そうだったんですね。
お母様のお気持ちやお父様、その時(長いご闘病の間)のそらへいさん、
弟さんのお気持ちを想像してしまい昨夜はなかなか眠れませんでした。
コメントも書けませんでした。

いずれは誰もがその時を迎えますが、、、。
喜んだり悲しんだりいろいろありますができることをできるだけして
日々生きてゆきたいと思います。

お母様はとてもいいお母さまだったのですね。
by watmooi (2012-08-25 23:57) 

FUCKINTOSH66

あさがおもロザリオも百合もそらへいさんのお母様もとても美しいです。。。
by FUCKINTOSH66 (2012-08-26 00:10) 

yukky_z

一日も早く、特効薬の実用化がされると良いですね!
その難病で苦しんでいる方々のためにも...
by yukky_z (2012-08-26 02:15) 

駅員3

世の中に難病と呼ばれている病気が沢山あって、苦しんでらっしゃる方々が沢山いらっしゃいますが、一日も早く解決の道を見つけて欲しいものですね!
by 駅員3 (2012-08-26 10:07) 

そらへい

cafelamamaさん
こんばんは

体験していないので、わからないし想像に過ぎないのですが、
ひょっとすると息を引き取る間際は確かに苦しいのですが
息が止まると同時に、得も言われない解放感、悦楽がやってくるのでは
と思ったりするのですが・・・
亡くなった方の安らかな顔を見るたびに思うのです。
でも、やはり起伏のない静かな眠りのような最期がいいですね。
by そらへい (2012-08-26 20:27) 

そらへい

プリウスさん
こんばんは

ガンもつらい病気ですね。
本当に私たちの親は、自分のことより子供を優先することが多くて
病床にいてもみんなのことを気遣っていましたね。
果たして私にそのときが来たとき、そんなふうにできるかどうか
自信がないですね。

先日、近所の方が亡くなられましたが、仏壇の祀り方や
残された連れ合いのことを、息子の嫁さんに震える字で
書き置きされていたそうです。
by そらへい (2012-08-26 20:35) 

そらへい

watmooiさん
こんばんは

母が病気だったことは知っておられても、こんな病気だったことは
ほとんどの方、ご存じなかったと思います。
私や弟は暢気なものでしたが、父は自分を犠牲にして
介護していましたね。

病が病だっただけに、もっともっと優しくしてあげるべきだったと
あとから思うことはよくあります。
暢気で楽天的な人だったので、甘えてしまったのではないかと思います。

私たちも一日一日その日が近づいているわけで、
そう思うと一秒たりとも無駄にはできないのですが、
なかなかそうもいかなくて
やるべきことを日延べしてしまったりしている自分があります。
by そらへい (2012-08-26 20:44) 

そらへい

FUCKINTOSH66さん
こんばんは

ありがとうございます。
アサガオ、母、ロザリオ、白百合
それだけで十分なのかもしれませんね。
by そらへい (2012-08-26 20:45) 

そらへい

yukky_zさん
こんばんは

患者にとっては、治らない、治療法がない、原因もわからない
病状だけが進行していくというのは、明日が見えないだけに
つらいことだと思います。
母には間に合いませんでしたが、今この病気にかかっている多くの方に
薬ができて、効いてくれることを願います。
by そらへい (2012-08-26 20:49) 

そらへい

駅員3さん
こんばんは

ALSに限らず、病気というものは、どれも患者にとっても家族にとっても
つらく、ときに過酷なものなのだと思います。とくに難病と言われる
原因不明、従って治療法もない病気にかかった患者は、明日が見えないだけに辛さは倍加するのではと思います。
光が見えれば、人は希望を持ち病とも闘えると思うのですが・・・

by そらへい (2012-08-26 20:55) 

ぼんぼちぼちぼち

高砂百合、りんとした美しさがありやすね。
あっしんちのほうでは テッポウユリはよく見ても これはあまり見かけないでやす(◎o◎)
by ぼんぼちぼちぼち (2012-08-27 10:40) 

夏炉冬扇

今日は。
南無阿弥陀仏。
by 夏炉冬扇 (2012-08-27 15:23) 

そらへい

ぼんぼちぼちぼちさん
こんばんは

タカサゴユリとテッポウユリは酷似しているそうです。
大きさがテッポウユリの方が少し小さいそうですが・・・


by そらへい (2012-08-27 20:33) 

そらへい

夏炉冬扇さん
こんばんは

今となっては、冥福を祈るしかありませんね。

by そらへい (2012-08-27 20:34) 

b.b.mk2

お母さま大変だったのですね。
心からご冥福をお祈り致します。

> 毎日そこにこびりついていたので気づかなかった眉間の皺、
> それが息を引き取るとともに消えたとき、今更のように母の苦しみを
> 知った気がしました。

心を打たれました。
お気づきになられたそらへいさんのお気持ちにも感動しました。
人が人を思う気持ちの深さはこの上なく尊くすばらしいものですね。
改めてそう思いました。

僕はまだ、こういう形でのお別れの経験はありませんが、
こういう気持ちにこだわって生きていきたいと思います。

ありがとうございます。
by b.b.mk2 (2012-09-08 18:33) 

そらへい

b.b.mk2さん
こんばんは

母は私たちを安心させるためかよく笑ってましたので
ついそれに甘えていたのですが、
安らかな顔をみて、病気がもたらしていた苦痛を
思い知らされました。

今際の際を超えたあとの安らかな顔は
身内だけが知り得るものかも知れませんね。

こちらこそありがとうございます。

by そらへい (2012-09-09 23:11) 

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