「雨の日と月曜日は」 [音楽(ジャズ)]
今年の梅雨は本当に梅雨らしく、よく雨が降ります。まだそれほど湿度も高くなく気温も低めなこの時期、家にいる分にはさして差し障りを感じません。
部屋で一人、音楽を聞いていると、曲と曲の間の無音の間に、あるいは演奏がピアニシモに入っていくとき、それも一つの音楽であるかのように雨音がしずかに聞こえてきます。
しとしと雨がやがて次第に音を高めていきます。音楽がかき消されそうになるので、雨音に負けまいとアンプのボリュームを上げます。一つ一つの音は水分をたっぷり含んだ空気を伝搬して、いつもよりしっとりとこちらに伝わってくるようです。
相変わらずセレッション3MKⅡで音楽を聞いています。低音のビリつきから解放されて、喜んでいろんな音楽を聞きまくっていたのですが、とうとうぶつかってしまいました。
アート・ペッパーのCDモダン・アート をかけたとき、BEN TUCKERがつま弾くベースの音で見事にビビリが発生してしまいました。やはり過大な低音の入力にはダメなようです。
一瞬落胆したのですが、なんとも無い時の方が多いし、なんとも無い時の聞き心地があまりに良いので手放せません。聞く音楽を考えたり、音量を絞ったり、時にはまた寝かせてしばらく休ませたりしながら、なんとかだましだまし聞いています。今のところ、ビビリは以前ほど気にならないレベル、発生頻度も少なく思えます。
このビビリ音については、プリウスさんのコメントによると、ウーハーのボイスコイルの擦れから来ているのだそうです。対処法として、スピーカーを逆さまにして保管する方法があるそうです。私の場合は、そうとは知らずたまたま横向けて長期間放置していた結果、症状が緩和したのだと思います。
いずれにしても、そのうち、根本的に何とかしなければと思っているのですが、以前、修理代にと貯めていた資金、治ったと勘違いして、レコード購入に回してしまいました。
「雨の日と月曜日は」
そのうちの一枚がオランダの歌姫アン・バートンの「雨の日と月曜日は」です。タイトルもそうですがしとしと雨が降る夜にぴったりのバラード集です。
私は古いスタンダードをそれほど知っているわけではないので、ジャズボーカルでもう一つ曲がわからないところがあるのですが、この「雨の日と日曜日は」のような、我々の世代のポピュラー曲を歌ってくれると、すごく分かりやすく嬉しくなります。
このレコードは3度目の来日時の1977年、6月1日、2日東京録音です。ベースに稲葉国光、ドラムに大隅寿男が参加しています。ちなみに印象的なジャケットのイラストは、内藤良治という方だそうです。
1977年というと、私はまだ東京在住だったのですが、なぜ聞きに行かなかったのでしょうか、なんとなくチラシ広告を見た覚えがあるような気がするのですが、たぶんお金がなかったんでしょうね。
現在CDでも発売されていますが、ジャケットデザインが違います。
真空管アンプが暖まるまでの間、トランジスタ組のYAMAHA、AX-1200+DENON(DL-103LC2+AU-306)をセレッション3MK2で聞きます。あまり激しい音も強いアタックもないアルバムなので、何とか無難にこなしています。
バックのピアノトリオが左右に広がり、アン・バートンのボーカルが見事にセンターに定位します。ちょうどそのあたりにJBL4312Dがあるので、まるで4312Dが鳴っているかのようです。
A面が終わる頃、真空管アンプも暖気が終わっているのでレコードをひっくり返しながら、隣のマイクロ、MR-411のターンテーブルにのせます。こちらはカートリッジはモノラルMCのDL-102と昇圧トランスAU-302の組み合わせです。
スピーカーJBL4312Dは左右揃っていますが、音はモノラルで出てきます。アン・バートンの歌声もトリオの演奏もすべてセンターで定位します。
さすがに真空管アンプと4312Dの組み合わせで聞くと、その迫力と包容力の大きさのようなものに、心地よさが売りのセレッション3も負けてしまいます。
1000円でお釣りの2枚 [音楽(ジャズ)]
暑くなったり寒くなったり、なかなか晴れた日が続かなかったりで、何となくぱっとしません。春って毎年こんなものなんでしょうね。そして、ようやくお天気が良くなって汗ばむほどの陽気になったと思ったら、もうそれは初夏なんですね。
虫歯が痛み出したので、仕方なしに歯医者さんに行ってきました。口をあけて治療を受けている間、診察室に流れている音楽は植村花菜さんの「トイレの神様」でした。きれいな声でとつとつと歌っているところが良いんでしょうね。フルコーラスだとけっこう長い歌ですが、治療機器の音と痛みへの緊張で歌はとぎれとぎれでした。
この歯医者さんの有線はjーpopを流しているんだと思っていたら、診察を終えて待合室で待っている間に聞こえてきた聞き覚えのあるイントロは、明らかに洋楽の乗りです。タイトルがすぐに思い出せなくて、長いイントロが終わって、歌い出しでようやくわかりました。イーグルスの「ホテルカリフォルニア」でした。
治療の後の痺れもいつしか癒えて、ようやく痛みから解放されて気分もすっきりです。もっともこれからしばらく通院がはじまりますが。
1961年録音/ヴァーブ
SIDE A 1. ブギー・ブルース 2.セント・ルイスから来た男 3.アイ・ウォント・トゥ・シング・ア・ソング 4.ブルースの女 5.ザ・バラッド・オブ・オール・ザ・サッド・ヤング・メン
SIDE B 1.ドゥ・ナッシン・ティル・ユー・ヒア・フロム・ミー 2.ワン・モア・マイル 3.ナイト・バード 4.アップ・スティト 5.セニョール・ブルース
いつも行く中古屋さんで見つけました。ジャズのレコードだけは、店頭販売から除外しているのではないかと思うくらい、徹底して置いていないお店なのですが、今回この1枚だけがチェックから漏れたんでしょうか。ひょっとして若い店員さん、アニタ・オディはジャズ・シンガーであること知らなかったのかもしれません。
ミディアムテンポの曲を、素晴らしい編曲とオーケストラをバックに、大人のアニタがしっとり歌っています。メンバーの主だったところでは、ボブ・ブルックマイヤー(tb)、フィル・ウッズ(as)、ズート・シムズ(ts)、ハンク・ジョーンズ(p)など一流どころが参加しています。
なかなかご機嫌なアルバムです。私が持っているアニタのレコードやCDの中でもお気に入りの部類に入りそうです。このレコード、アマゾンで探してみましたが、残念ながら、CDは出ていないようです。
このとき、一緒に買ったのが、こちら。
つい懐かしさに手が出てしまいました。レコードの盤面はきれいで、音質は良いのに2枚合わせて1000円でおつりが来ました。お金がないときは、いつもここへ行きます。
一週間が経って [音楽(ジャズ)]
去年買った32インチ液晶テレビの地上デジタルの画面に(こんな映像を見るために買ったわけではなかった)何度も何度も津波が街を飲み込む映像が繰り返し流されていました。まるで悪夢を見るように。
テレビから離れて、日常生活を営むために外に出てみると、ふるさとの山も畑も田んぼも家々も何事も無かったかのようにそこにあります。私にはどこも壊れていない目の前の風景の方が、現実でないような妙な錯覚に陥りました。
あれから一週間が経つのに、昨日も一昨日も雪がちらついて、今年の春はいったい何処へ行ったのでしょう。こちらでこんなに寒いのですから、北の被災地はいかほどでしょうか。テレビ画面に映し出される瓦礫の山に積もる雪に、自然の過酷さを見る思いです。
泣き叫ぶ人、瓦礫の前にただ立ちつくす人、再会して泣きながら抱き合う人、表情を変えず淡々と運命を受容しようとする人、それでも明日を向いていこうとする人、被災者の姿は、どれ一つとして私たちの胸を打たないことはありません。
単に東北という地域の持つ美徳だけではないのかも知れません。逆境は人を鍛え、美しく律するのだとつくづく思います。
人種差別という言われない逆境の中で、ひとりの人間として音楽を愛し、音楽を糧として生き抜いていったジャズの演奏に打たれるのも、そんな理由からかもしれません。
アスペクト・イン・ジャズ(2) [音楽(ジャズ)]
我が家のスイセン、去年より二ヶ月遅れでやっと咲いたのに、
先日、下北沢のジャズ喫茶「マサコ」の懐かしい映像をYouTubeで見つけて、記事をアップしたのですが、今回もYouTubeをうろうろしていたら懐かしい映像というか、音声に出くわしました。
盲目のジャズ・ピアニスト [音楽(ジャズ)]
1月末の寒さが2月に入って少し緩みました。でも、まだ2月、このままでは済むはずはないと思っていたら、やはり中旬になって毎日のように雪が降ったり、積もったり、朝晩の冷え込みも半端ではありません。
救いは、少しずつ明るい時間が長くなってきていることでしょうか。そして昨日は、この時期にしては珍しく激しい雨でした。雪でなくて良かったと思います。
盲目のジャズピアニスト、ジョージ・シアリングさんが2月14日に亡くなられました。91歳だったそうです。
ジョージ・シアリングというと、このアルバムですね。私が所有していたのもこのCDでした。彼はたくさん作曲していますが、中でも名曲「バードランドの子守唄」の作曲が有名です。
ピアノトリオにバイブとギターが加わったオリジナル・クィンテットは当時評判を呼んだのだそうです。久々に聞いてみました。
バイブとギターが入っているせいか、とてもリラックスした演奏です。こんなことを言っては失礼かも知れませんが、眉間にしわ寄せて聞くジャズではなさそうです。
このCDは1949年2月から1950年7月までの間に演奏されたものの中から24曲が集められているのですが、全編がピアノトリオとギター、バイブの編成のせいか、リズムもよく似ていて、耳あたりの良さに聞き流していると、私のような者には、どの曲も同じように聞こえてしまいます。
中にバンドネオンの演奏が入ったのが二曲ほどあります。この楽器が入るとすごくヨーロッパ調に聞こえます。誰が演奏しているのかと思ったら、なんとジョージ・シアリング本人でした。彼は、ロンドン生まれでクラシックの素養があるとかで、ヨーロッパの香りがしても不思議ではなさそうです。
それにしてもこのアルバムがビ・パップ全盛の1950年前後に演奏されたというのも面白いですね。前回のYouTube、チャーリー・パーカーの「サマータイム」と録音時期は近いようです。ちなみに「9月の雨」は当時、大ヒットしたそうです。
ご冥福をお祈り申し上げます。
小さな春 [音楽(ジャズ)]
先日、1月31日の朝の寒さは尋常ではありませんでした。寒いと言うよりしばらく外にいるとむき出しの顔や耳が痛いほどでした。
滋賀県でも北の方や北陸は、大雪で道路が封鎖されて大変だったようです。大雪、鳥インフルエンザ、新燃岳の噴火とこの冬あちこちで自然災害による影響が出ています。被害に遭われた方々をお見舞いするとともに、一日も早い復旧を願います。
当地は雪がたくさん降るわけではありません。どちらかというと凍てる方です。池や、川のよどんだ部分が凍り付き、野は雪のあとのように白く霜で覆われます。道路は雪よりも凍結の方が怖くなります。
それにしても今年の冬の寒さは近年にないもののようです。我が家で言うと、昨冬、スイセンの記事を載せたのは1月15日でした。畑のスイセンが咲いたからで、庭のスイセンはもっと早く、暮れの12月から咲いていました。
それが、今冬は年を越えてもう2月と言うのに、畑はもちろん庭のスイセンもまだ葉っぱばかりです。昨日、じっくり見てみたら葉の間からようやく芽のようなものが出てきていました。
そんな具合ですから、kurakichiさんが、東京郊外の小さな春を見つけて、レポートされてもまだそんな気になれないなんてコメントしていたのですが、暦が2月に変わると、カレンダーのページをめくるように気温がいっぺんに緩みました。
今日は立春。例年なら、立春とは名ばかり・・・と言うのが慣用句のようになっていますが、今年に限っては先日までがあまりに寒かったので、本当にもう春が来たのかと思えるほどの暖かさです。
そうすると現金なもので、今までもちゃんとあったのでしょうが、とても目を向ける気にもなれなかった家の裏の雑草、こちらが捜したわけでもないのに、向こうから目に飛び込んできます。
まだ本当に小さくて少しなんですが、我が家の春の到来を告げる使者たちです。こんなに寒い凍てつく日々が続いても、自然は霜の下で、ちゃんと春の準備を進めていたんですね。
もっともまだ2月になったばかり。今朝もきつい霜でした。これから1ヶ月ほどはまだまだ寒い日があると思いますが、ここ2.3日の寒さのゆるみでようやく春の訪れを数える気になりました。
今日のジャズはジム・ホール&パット・メセニーのギターデュオです。私の好みの守備範囲であるスウイングやモダンジャズからはみ出ていますが、スイングやモダンでは覆いきれない詩的な演奏です。
タイトルはCold Springですが、霜が溶けて滴となって大地に落ち、小さな流れになって広がっていくかのような、静かな時の流れを感じさせる演奏です。その静けさからスタジオ録音かと思ったのですが、最後に拍手がわき上がったので驚きました。
やっとジャズ [音楽(ジャズ)]
七日正月、七草粥の日ですね。一般的には、お正月は、今日あたりまで指すのでしょうか。それとも3が日だけでしょうか。
正月というと、のんびりしたムードが漂うのですが、今年はいろいろとあって忙しい年末年始でした。これからも引継ぎや新年会などが計画されていますが、早くゆっくりジャズが聞ける日常に戻りたいところです。
新年2日には弟一家がやってきました。600グラムの極小未熟児で生まれた姪も、もう5歳になりました。まだ障害が残っていますが、身長体重はほぼ追いついているそうです。
今まで入院や体調不良のため寒い時期はまったく駄目でしたが、今年初めて正月に我が家を訪れてくれました。少しずつですが元気になってくれています。口のほうも達者になっていましたが。
3日は、氏神様で還暦の参拝、もちろん、米寿、喜寿、初老、女性の33歳の厄年生まれの人たちも一緒です。
境内は森の中にあるので、寒かったですが、この日は良いお天気、大晦日のようなことがなかったのは幸いでした。私は組長の分も含めて、30分インターバルを二回、拝殿の板の間に座ってました。
午後からは、中学校の同窓会があり、久しぶりに昔に戻ってはしゃぎました。卒業後からは45年ぶりですが、同窓会としては9年ぶりでした。もう皆、平等に還暦なわけで、丸く落ち着いてきた感じでしたね。
思い出せない人、昔のままあまり変化を感じさせない人、かと思えばあの紅顔の美少年が妖怪みたいになっているなんてのもあったりして面白かったです。
そんなこんなで、このところ本来のジャズ・オーディオの話題にいけてません。
- アーティスト: ドナルド・バード,ジャッキー・マクリーン,デューク・ピアソン,ダグ・ワトキンス,レックス・ハンフリーズ
- 出版社/メーカー: EMIミュージックジャパン
- 発売日: 2009/06/10
- メディア: CD
年末に買ったドナルド・バードのフュエゴ
実は「アイ・リメンバー・クリフォード」の演奏で有名なリー・モーガン Vol.3 、なかなかレコードが見つからず、CDを聞いていたのですが、年末珍しくオークションに出ていたので入札していました。ところがあと少しというところで、ほかの人に浚われてしまい、変わりにというのもなんですがこちらを購入した次第です。
こちらもCDで所有していたのですが、「ブルーノート・ユナイテッド・ステート盤RVG刻印あり」に惹かれて落札しました。肝心の音は、同じ盤ではありませんが東芝盤やCDの音より濃い感じがします。
ドナルド・バードはクリフォード・ブラウン亡き後、リー・モーガンとともに台頭してきたトランペッターですが、私は彼のリーダーアルバムはCD2枚、この「フュエゴ」と「オフ・トゥ・ザ・レイシス」しか持ってません。
ジャッキー・マクリーンとの双頭コンビでフュエゴの方が一年後の1959年の作品です。ジャッキー・マクリーンはエキサイティングに、ドナルド・バードはのびのびと、どちらも気持ちよく吹いていますね。
このアルバムはフュージョンのさきがけのようにいわれてますが、普通のハード・パップ演奏や、スローなブルースもあります。「ロウ・ライフ」「エイメン」などはファンキーで、聞いていて気持ちよくなる演奏です。ほかには3曲目の「ファンキー・ママ」が私は好きです。デューク・ピアソンのシンプルなピアノ・タッチも良かったです。
気になっていたレコード [音楽(ジャズ)]
今年もあと二週間になってしまいました。去年の今頃は何をしていたのかと、ノートを見てみたら、せっせと家の片付け、ゴミの処分などをしていたようです。暮れの大掃除、翌年、六年ぶりに法事があるということで気合が入っていたのだと思います。
押し迫った12月26日には、図書館でライブラリー・コンサートがありました。「ファンタスティック・ジャズ・ナイト」で、ボーカルとピアノトリオの生演奏を久しぶりに楽しみました。
図書館でのコンサート、今年も期待していたら今年はジャズではなく、ペルーのフォルクローレだそうです。それでも、生のギター演奏が聴けるから行こうと思っていたのですが、なんと今年は去年より一週間早い明日、12月18日に催されるそうです。
明日は、わが菩提寺の寺勘定の日です。私は今年会計にあたっているので、会計報告をしなければならず、さぼれません。ソニー・ロリンズの時と言い、今回と言い、今年はよくよくコンサートに見放された一年です。
その代わりというのもなんですが、今年ももうすぐ終わってしまうので、先日、日ごろ気になっているレコードを数枚、ヤフオクで落札しました。そのうちの一枚がこちらです。
- アーティスト: クリフォード・ブラウン,ズート・シムズ,ステュ・ウィリアムソン,ラス・フリーマン,ジム・ホール,ボブ・ゴードン,モンティ・バドウィッグ,メル・ルイス,カーソン・スミス,ジョー・モンドラゴン,シェリー・マン
- 出版社/メーカー: EMIミュージックジャパン
- 発売日: 2010/09/22
- メディア: CD
このレコードには、実はちょっとした苦い思い出があります。私は、若い頃、クリフォード・ブラウンのレコードはほとんど集めているつもりでいました。当時持っていたディスコ・グラフィーではそういうことになっていたのです。
数年前、ブログ仲間のある方が、ご自身のブログでこのレコード(CDだったかもしれません)を買ったと言う記事を掲載されていたので、私はつい、正規のものですかなどと、コメントしてしまいました。
私は古いままのクリフォード・ブラウンのディスコ・グラフィーを信じていました。もちろんそこにこのレコードは載っていなかったんです。
それで、すでにある音源を組み合わせた名演集やカップリング盤ではないかと思ってしまったのでした。また、クリフォード・ブラウンと西海岸のズート・シムズが私の中では結びつきませんでした。
あとから、この盤の存在を知ったのですが、時すでに遅しでした。自分の不勉強を棚に上げて、偽物呼ばわりとはずいぶん失礼なことをしてしまったものです。その方のブログは最近お見かけしませんが、もしこちらにお寄りいただいていることがあったら、ここで改めてお詫びしたいと思います。
それにしてもこの盤はいつごろ、発売されたものなのでしょう。原盤はパシフィックレコードです。国内盤は1970年代には見なかった気がするのですが、落札したジャケットのどこにも発売年は記されていません。帯には東芝EMI、ジャズ・コレクターズ・シリーズ「不滅のクリフォード・ブラウン」となっています。
肝心の演奏の方は、ざっと聞いた印象では、私が知っているクリフォード・ブラウンの演奏とはずいぶん違った感じを受けます。やはりズート・シムズやシェリー・マン、メル・ルイスなど西海岸のメンバーで構成されているせいでしょうか、よその庭で聞いているような違和感を感じてしまいます。
ハードバップ全盛の1954年の録音ですが、さすがにウエストコースト、どの曲も洗練されていて、軽やかで上品、きれいに仕上がっていますが、ここにクリフォード・ブラウンが入っていると思うと物足りなさを感じます。
もちろんブラウニーらしい歌心や輝きは随所に発揮されていますが、同じ時期の「スタディ・イン・ブラウン」などと比べると7.8割くらいの印象です。とくに物足りなさを感じるのは、彼のソロが短いからでしょうか。
このアルバムがジャック・モントローズの編曲で全て構成されているせいか、全体の演奏は、どちらかというとソロよりも、アンサンブルに重点が置かれているような気がします。
B面一曲目の「ジョイ・スプリング」はクリフォード・ブラウン作曲のおなじみの曲ですが、かなり印象が違って聞こえます。メンバーは違っても、ブラウニーのソロに耳を傾けていると熱いものが伝わってきます。
たった四年間しかレコーディング活動できなかったクリフォード・ブラウン、主にイースト・コーストで活躍していた彼が、ウェスト・コーストのズート・シムズやシェリー・マン、メル・ルイスらと演奏できたこと自体を、奇跡と思うべきなのかもしれません。
下のYouTubeは画像がマイルス・デイビスになっていますが、演奏はブラウン・ローチ・クィンテットの「ジョイ・スプリング」です。聞き比べてみていかがでしょうか。
ニューヨークの秋 [音楽(ジャズ)]
お茶の花です。露に濡れ、朝日を浴びた白い花は、花心に火が灯っているようです。一昨年、出勤前にお隣りの茶の木に咲いていたのを撮ったものです。
去年まで、我が家とお隣りの境には、お茶の木が一列に植わっていました。昔、田舎ではまだまだ自給自足の部分が多かったので、田植えが終わると母たち女の人は、姉さんかぶりに絣姿で家の周りに植えられた茶畑のお茶の葉を摘んで、自家用に回していました。
時代が進み、いつの間にか誰ももう茶の葉を摘まなくなりました。もともと低木なのでそれほど大きくはなりませんが、散髪に行っていない子供の頭みたいに伸び放題になってました。
それをみっともなく思ったのか、去年、お隣がお茶の木と柿の木を切ってしまい、代わりに味気ないフェンスが立つようになりました。今年はもうお茶の花が見られないなぁと思っていました。毎年、金木犀の黄色い花が咲く頃に咲いていました。
ところが、お隣との境界の茶畑があったときは気づかなかったのですが、反対側にある我が家の柿の木の下、柊や他の木がごちゃごちゃと植わったところに一本だけ、茶の木が混じっているのに気づきました。白い花を見るまでそんなところに茶の木があるのを全然知りませんでした。しかも、金木犀が散ってずいぶん経つ、今頃咲いています。
さて、今日はブログ仲間で現在ニューヨーク在住の画家
さんが、本場ニューヨークはマンハッタン、グリニッチ・ヴィレッジにある老舗ジャズクラブ、ビレッジ・ヴァンガードでのライブをレポートしてくれましたので、紹介したいと思います。ビレッジ・ヴァンガードはビル・エバンスがかの有名な「ワルツ・フォー・デビ-」を録音したところです。他にもソニー・ロリンズ等、数々の名作のライブ録音が行われています。
田舎の秋に佇みながら、行ったこともないニューヨーク、その秋に思いを馳せて名作「ニューヨークの秋」をYouTubeで探そうとして、ふと前にも似たようなことをしたことに気づきました。
我がブログをひっくり返してみたら、なんと去年は11月初旬に「Autumn in Newyork」というタイトルで、やっぱりFUCKINTOSH66さんの記事を紹介していました。ただし、その時はもうひとつの老舗のジャズクラブ、ブルーノートの入り口付近と、道路を封鎖して行われるハロウィンのお祭りの様子でした。
ブログを長くやっていると、(このところずっと週一の更新ですが、So-netのリポートによるともう3年半になるようです)ついマンネリに陥って、似たようなタイトル、似たような記事、似たような写真を載せてしまいがちです。今回は苦肉の策、タイトルを前回の英語表記からカタカナ表記に変えてみました。
幸いにも、「ニューヨークの秋」はエラ&ルイを初め、ナット・キング・コール、サラ・ボーン、フランク・シナトラ、ジョー・スタッフォード、クリフォード・ブラウン、ケニー・ドーハムなど名演が目白押しです。YouTubeの中からどれか一つを選ぶのが大変です。
去年はやはりエラ&ルイを選んでいました。今回もエラ&ルイもしくはクリフォード・ブラウンあたりを選びたいところですが、ジョー・スタッフォードやケニー・ドーハムの演奏も捨てがたい気がします。
で、迷った挙句、聞いているようであまり聞いていないかもしれないチャーリー・パーカーにしてみることにしました。珍しくバラードを気持よく歌い上げています。
ソニー・ロリンズ~ひとりコンサート [音楽(ジャズ)]
秋が急激に進んでいくようです。彼岸花が咲いたかと思ったら、いつの間にか金木犀が黄色い小さな花を付けてあたりにいい匂いを放つようになってきました。
たしか5日の火曜日だったと思います。お昼にタモリの「笑っていいとも」を見て他愛もなく笑っていたら、エンディングでソニー・ロリンズが現れたので、腰を抜かしました。いくらタモリの番組と言っても、「笑っていいとも」ですからね、不意を打たれました。
舞台の袖から出てくる時、長身を折り曲げるようにして出てきたので、歳で腰が曲がったのかと思いましたが、ただ前かがみに歩いていただけのようで、舞台の中央ではしゃきっと立っていました。
ソニー・ロリンズはもう80歳だそうですが、小柄なタモリの横に立つと、いっそう大きく見えました。メガネをかけ、白髪の髭に覆われた例の風貌です。首からサックスを下げていたので、一音だけでも吹いてくれないか、あるいはタモリが所望しないかと思いましたが、やはりそんなことはありませんでしたね。
現在ツアー来日中、あと二日ほど残っている公演の当日売りのチケットの宣伝に出てきたようです。その残っている公演のひとつが、明日(10月9日)のNHK大阪ホールでのコンサートです。
2.3週間ほど前に、試しにネットで調べてみたら、まだチケットがあったので驚きました。S席で1万円ほど、ついポチっと押したくなりましたが、あいにく明日は、所用で出かけられません。返す返すも残念です。
ちなみにロリンズの来日は2年ぶりで、もう24度目になるのだそうです。すごい来日回数ですが、1980年代で7度目の来日を果たしているということは、残りのほとんどがこの20年間でなされていることになると思います。
ソニー・ロリンズは1930年生まれ、マイルス・デイビスやジョン・コルトレーンなど伝説のジャズ・ジャイアンツとビ・バップやハード・バップを過ごした同時代の人です。ただそれだけではなく、30歳を前にすでに彼らと伍して名声を獲得していました。1956年の「サキソフォン・コロッサス」はあまりにも有名です。
その後、彼は何度かジャズシーンから雲隠れし、ジャズを習い直しに大学に通ったり、湾岸労働者になったりしました。一見、奇異な行動にも見えますが、ただ漫然とテナーを吹いていたのでは無い、彼の真摯な姿勢が伺えるエピソードです。
幼い頃から、カウント・ベイシー等の音楽に親しんだそうですし、「plus4」や「BASIN STREET」で共演したクリフォード・ブラウンからは強い影響を受けたそうです。ロリンズの太く暖かみのある音色、メロディアスで自由なアドリブには、彼らの良い影響があるような気がします。
そんな彼が、今も現役ジャズメンとしてプレイし、来日コンサートまでこなしているというのは、ほとんど奇跡に近いことだと思います。もう彼の周りの人達はほとんど亡くなっていますし、いても現役を続けられなくなっているのですから。
明日のコンサートに行けないので、今夜は我が庵でひとりコンサートに耽けっています。プレーヤーは例によってDENONのモノラルカートリッジDL-102にMICROのMR-411、コントロールアンプはYAMAHA、C-6、パワーアンプはLUXKIT、A-3500改、そしてスピーカーはJBL 4312Dです。
まずはじめは、お気に入りの一枚です。初めて買ったソニー・ロリンズでもありました。若い頃、何度も聞きましたね。何度聞いても飽きない良さがあります。珍しいピアノレス、ワンホーンのトリオ。Contemporary盤なのでベースがレイ・ブラウン、ドラムがシェリー・マンです。ピアノがないせいで、ロリンズのプレイの魅力が最もよく出ていますし、洒落てます。この間の東京JAZZ2010でジョシュア・レッドマンがソニー・ロリンズに捧げるオマージュとして、このピアノレス、ワンホーンのトリオで演奏していました。
これはブラウン&ローチクインテットの最後のレコーディングアルバムです。隠遁生活をおくっていたソニー・ロリンズが急遽加わることになり、その後彼はクリフォード・ブラウンに感化されて、再びジャズを始めるようになったのです。他のブラウン&ローチのクインテットと比べると、ロリンズのテナーの音色の柔らかさ、アドリブの豊かさが目立ちます。もちろんブラウニーのソロは文句がありません。
a night at the "village vanguard"
ライブ盤です。拍手がたくさん聞こえて白熱の演奏と言うわけではないのですが、長く続くロリンズのソロとシンバルの音に、ライブ独特の熱気を感じますね。これもピアノレスのトリオで、ほとんどロリンズの一人舞台です。彼の即興演奏が十分に堪能できます。
Sonny Rollins & The Contemporary Leaders
「way out west」と同じくContemporaryのシリーズです。多分二枚目に買ったアルバムだと思います。こちらもそこそこ聞いていたんだと思います。久しぶりにかけてみて懐かしかったです。共演者はハンプトン・ホーズやバーニー・ケッセル、シェリー・マンなど、西海岸の有名プレーヤーたちです。
この盤は数年前に買った再発の重量盤なんですが、なんとジャケットのパーソネル欄に信じられないようなミスプリントがあります。多分再発盤だけのミスだと思いますが。
ロリンズがトロンボーンになってます。JJ・ジョンソンがアルトサックスだそうです。フィル・ウッズがテナー・・・もう無茶苦茶ですね。
若い頃、このジャケットはジャズ喫茶で良く見かけました。他にも「アルト・マッドネス」とかバトルもの人気があったように思います。このレコードも買ったのは最近です。
唯一のコルトレーンとの共演盤として有名なのですが、共演しているのはタイトルの「テナー・マッドネス」一曲だけで、あとはロリンズのワン・ホーンカルテットです。メンバーがマイルスリズム隊のレッド・ガーランド、ポール・チェバース、フィリー・ジョー・ジョーンズという顔ぶれです。
このレコードはモノラル盤なので、ステレオカートリッジで聞いても左がジョン・コルトレーン右がソニー・ロリンズという聞き分けはできません。最初にやや固めの音でソロを取るのがコルトレーン、二番目がロリンズです。ロリンズのソロはコルトレーンのあとで聞くと物足りないほど音色が柔らかくたゆたつようにうねっています。
年齢はコルトレーンの方が4つほど上なのですが、このころ、先に名も腕も上げていたのはロリンズの方でした。若くして名プレーヤーの仲間入りをしていたので早熟の天才なんでしょうね。それに比して、コルトレーンは不器用で、努力に努力を重ねてあの頂きまで上り詰めたのだと思います。
ロリンズはすでに何枚かリーダーアルバムを出し、「サキソフォンコロッサス」を発売した年でもありました。この「テナーマッドネス」を聞く限りはコルトレーンのソロは強いもののやや直線的で、ロリンズのソロは自由奔放で音楽的な豊かさを感じさせます。
最後はやはりあの有名な「SAXOPHONE COLOSSUS」です。やはり名盤と言われるだけあって、どの曲を聞いても素晴らしいですね。「セント・トーマス」などはNHKの番組のテーマなどにも使われていて、すっかり耳慣れた曲になっています。
「SAXOPHONE COLOSSUS」に限らず、ここに上げたアルバムのどれをとっても、ソニー・ロリンズの太くて豊かな音色と、自由奔放な暖かみのあるアドリブソロがたっぷりと聞けます。彼の演奏を聞いていると、ジャズは小難しいものではなく、ひとつの素晴らしい音楽であるということを知らされる気がしますね。
ソニー・ロリンズは一体どれくらいのレコードを出しているのか見当もつきませんが、私が持っている彼のリーダーアルバムはここまでです。おさわり程度なんでししょうね。あと共演盤で、マイルスの「バグス・グルーヴ」、「DIG」、そしてブラウン&ローチの「BASIN STREET」、「コンプリート・ジ・アメイジング・バド・パウエル Vol.1」などなど。
CDでは同じく「SAXOPHONE COLOSSUS」「plus4」「WAY OUT WEST」を重複所有し「NEWKS TIME」「THE BRIDGE」「SONNY ROLLINS Vol.2」「OLD FLAMES」「ザ・ファビュラス・ファッツ・ナヴァロ Vol.1 、2」などを持っていますが、今夜はもう時間がありません。