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ブルーバッフル~自転車店で(2) [オーディオ]

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 梅雨の間のある日、灰色にたれ込めた空を見上げながら、前輪がパンクした自転車を押して、2キロ先の自転車屋さんに持っていきました。

 空気を入れると乗れたのですが、翌日には抜けていました。虫ゴムを替えても改善しません。ぺしゃんこになったまましばらく放っておいたら、タイヤが裂けていて、もう空気を入れることも出来なくなっていました。

 私の自転車は、息子が中学、高校と通学に使っていたお古で、もう10年以上昔のものです。長い間放ってあったのを数年前、メンテナンスしてもらって時々通勤に使ったり、ちょっとした使い走りに乗ったりしていました。

 二キロ先、隣の集落にある自転車店は、以前お話ししたことがあるJBLスタジオモニターが置いてあったお店です。今日もJBLに会えるかなと、ちょっとどきどきしながら行きました。

 その自転車店は、ずっとおじさん一人で切り盛りされています。父が昔、バイクを買い、私と息子が通学用の自転車を買っているので、親子三代利用させてもらってます。

 ですからおじさんと言っても、それは私が子供の頃のことで、今ではその私がおじさんなので、自転車屋のおじさんはもう立派なおじいさんに昇格されています。しかし、ここでは便宜上おじさんと呼ばせてもらいます。

 そのお店で、JBL4343らしいスタジオモニターを見てからもう数年が経つと思います。その後、この店の前を自転車で通るたびに、窓ガラスからわずかに見えるスタジオモニターのブルーバッフルを確かめていました。

 しかし、いつ頃からか姿が見えなくなりました。段ボールが積みあげられているのでその下になってしまったのか、どこかへ移動されたのか、あるいは処分されてしまったのか。

 そんなに気になるなら、どうしたのか聞きに行けば良いし、なんならもっと早くに買い取りを申し込みに行けば良さそうなものですが、4343となると置き場を考えるだけでも大変、その上それを鳴らしきるとなると、アンプ類も今のままでは太刀打ち出来ません。そして何より、買い取りを申し込むだけの資金がありません。

 それでもJBL4343のような名器が、使われることなく倉庫に放っておかれていると気になります。いつまでもそのまま段ボールの下に埋もれているのだったら、おじさんがもてあましているのなら、邪魔で困っているのなら、引き取らせてもらってもいいなぁなどと夢のような、虫のよいことを考えたりしていました。

4343_7-2.jpg JBL/4343

 以前見たときは、こんな風に横向きに寝かされていて、38センチのウーハーのエッジがすべて抜けていました。


 店先で声をかけると、すぐに返事がありました。おじさんは、今時農業をされている方でもここまでひどくはないと思うくらい腰が曲がっていて、久しぶりに見たせいか、さらにひどくなっている印象でした。

 自転車を一目見て前輪のタイヤ交換と言うことになりました。もう10年以上経つのに一度も変えていなかったこと自体が不思議です。後輪は以前、変えてもらってます。

 まぁ、かけてお待ちください、とすぐそばにある小さな椅子をすすめられました。店内は自転車数台と、今流行のアシスト自転車が展示されていますが、それよりも修理道具や様々なパーツなどがあたり一面に散らかり積み上げられていて、以前来たときより、さらに店内は狭苦しくなっていました。
 
 私が座った椅子の背中側にJBLのスピーカーが置いてあった倉庫があるのですが、振り返ってみても、やはり段ボールが積み上げられてあるだけで、以前のようにスタジオモニターのブルーバッフルは見えません。

 「JBLのスピーカーはどうしたんですか」思い切って聞いてみました。

 おじさんの返事は意外なものでした。親切な方があって、抜けていたウーハーのエッジ、取り寄せて張り替えてくれたのだそうです。一本2万円だったそうです。

 まだ前のまま段ボール箱の下敷きになっている可能性が大と思っていた私は軽いショックを受けました。まさか、エッジの張り替えが済んでいるとは、想定外です。しかも一本2万円で修復できたと言うのも驚きでした。

 では、修復されたスピーカーをおじさんは、聞いているのかというと、そうでもないようです。自宅は別にあるそうで、いずれそこで聞くと言うことでした。私の浅はかなもくろみは、ここで脆くも崩れ去りました。

 

 おしゃべりをしながらも、おじさんはさすがに慣れた手つきで、前輪をはずしていきます。腰が曲がっているので思わず、手伝いたくなるのですが、そこは熟練した腕、軽々と作業を進めていきます。

 古いタイヤをはずし終えて、おじさんはその辺に散らばっている工具や物をまたいで、奥の倉庫へ行くと、そこから無造作にタイヤの束を持ってきて私に見せました。

「これ、見てください。問屋が使ってくれと置いていったんやけど、捨てようと思ってますねん」
「え、どうしてですか、もったいない」

「ぺらぺらでっしゃろ。すぐに駄目になります。こんなもの、使ったら信用問題にかかわりますわ」

 そう言うと、おじさんはもう片方の手に持った某有名メーカーのロゴが入ったタイヤを、私の自転車に取り付け始めました。

 作業の間、ステレオの話題になりました。私が少し知識があること、興味を持っていることがわかったのでしょうね。そのあと、JBLのスピーカーと一緒におじさんがご近所の方から譲られたと言うレコードプレーヤーとアンプを見せて頂くことになりました。

 4343クラスのJBLスタジオモニターを駆動するプレーヤーやアンプはどんな機種だろう。プレーヤはトーレンスガラードだろうか、アンプはマッキントッシュマランツ、しかも相当重いということだから真空管の可能性もある・・・妄想がどんどん膨らんで行きました。

 案内された店の奥は、かつては住居だったところのようですが、今はほとんど物置状態になっていました。いろいろな物がなんの脈絡もなく雑然と置かれています。

dp-80-h.jpg  DENON/DP-80

 一番奥の廊下の突き当たりに、そのオーディオセットはありました。上段にあるレコードプレーヤーはDENONDP-80で、同じくDENONのキャビネットに取り付けられていました。型番を見落としましたが、アームもDENON製でした。

 まだ動くそうです。中古市場に出してもそこそこ値が付きそうですが、期待に反して平凡でした。カートリッジは白に赤いラインが入っていたので、たぶんDL-103Dだと思います。

 dl103d.jpgDENON/DL-103D 超広帯域再生」
標準価格:35,000円

 下の段にいくつもの機材が積まれていましたが、一目見てあまり使われていないのがわかる埃のかぶりようでした。SONYのカセットデッキは、よくあるようにテープが巻き付いて使えないそうです。

 その横にはOTTO(三洋)のシステムステレオのプレーヤーとレシーバがありましたが、これも壊れているそうです。チューナーもありましたが、つい興味がないので見落としてしまいました。

 一番下の段に、JBLと一緒にセットで譲られた重くて持てないアンプがありました。期待した真空管ではなく、トランジスタです。かなり大きな筐体、これもDENONで、たぶんプリアンプがPRAー2000、メインアンプがPOA3000ではなかったかと思います。

pra2000.jpg   PRA-2000

 POA3000だと34キロだそうですから重いはずです。1979年オーディオブームの真っ最中に出されたもので、私はこのような高額品を視野に入れたことがないのでわかりませんが、オーディオファイルの間では相当人気があった物だと思います。

 ただ、この個体に関しては長い間あまり使われていないようで、正常動作するか怪しいと思いました。おじさんは、ヘッドホンを差し込むと雑音がすると言ってました。使えるようにするには相当メンテナンス費がいりそうです。
 
 DENONのPRAー2000とPOA3000でも凄いことなのでしょうが、ひょっとしたらマッキントッシュやマランツに出会えるかも知れないと思っていた私は、少し拍子抜けした気分でした。

 元の所有者はこのシステムを自宅で小さい音で聞かれていたそうです。いかにももったいないような話ですが、たぶん元の持ち主にとっては、これらのシステムを所有することに意味があったんだと思います。日本の道路では、実力を発揮しきれないベンツやBMWを所有するのと同じように。

poa-3000.JPG DENON/POA3000

 

 いくつかの部屋と廊下は、ことごとく物で埋められていました。物の上に物が積み重ねられ、人がやっと通れるだけの空間が何とか空けられていました。

 数台のブラウン管テレビや古いラジオ、ラジカセ、CDプレーヤー、DVDプレーヤ、それから中国製のサラウンドシステムなども見せてくれましたが、正直DENON製品とはあまりにも落差がある物でした。

 おじさんはオーディオファンと言うより蒐集家のようでした。他にも二眼レフカメラ、フィルム一眼レフカメラ、古い置き時計や掛け時計、馬車の車輪のようなものから、黒檀で彫られた仏像や五重塔、いくつもの陶器などがところ狭しと置かれていて、さながら骨董店のようでした。

 中古店を回っては、これらの物を集めて、自分で磨いたり直したりしているのだそうです。おじさんはいかにもくつろいだ表情で、それも中古店から仕入れたらしい椅子にゆったり腰掛けて、戦利品の品々をあれこれ私に説明してくれるのでした。

 オーディオ製品を見た私は、そろそろ暇乞いしたかったのですが、おじさんがあまりにも楽しそうに骨董品の自慢話しているので、言い出しかねていました。

 そこへ店先で人の声がしました。私たちは店に戻りました。問屋さんが部品を持ってきたようです。その用件が済むと、それを潮に、自転車の最終チェックをしてもらい引き上げることにしました。

 店を出ると、空はさらに灰色を深めて今にも降り出しそうでした。ここへ来るとき、わずかに抱いていた都合の良いもくろみのことを思って苦笑しました。腰を上げると、確実に軽くなった自転車のペダルを思い切り繰りました。


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MCトランス [オーディオ]

 よく雨が降ります。このところ毎日雨です。しかも朝のうちは晴れていたのに、急に風が出てきて雨が降り出したり、雷が鳴ったりと荒れ模様のことが多い気がします。気温の方も変動が激しく、夏日の日があるかと思うと霜の降りそうな寒い日があり、なかなか安定しません。

 昨日も歯医者さんに行ってきました。今回は治療時間も待ち時間も短かったので、J-POPばかり数曲かかっただけでした。そのうちの一つはたぶんEXILEだと思うのですが、曲名がわかりません。子供が中高生の頃は、一緒にJ-POPが流れる音楽番組を見ることがありましたが、最近はさっぱりです。


 最近、オーディオの方は、大きな変化はほとんどありません。この間、お話ししたようにセレッション3が復活した程度です。他に欲しいものが無いわけではもちろんありませんが、欲しいものは宝くじでも当たらないと手が出ないものばかりです。

  いつ欲しいものが手に入るのかわかりませんが、それまでは、小金で何とかなるものを揃えて、環境を整えておこうと思っています。今回はMCトランスです。

 

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 DENONAU-320です。MCトランスはすでに同じくDENONのAU-305を持っています。これはDL-103用に開発されたトランスだそうですが、私はDL-103を持っていないので、主にDL-103LCⅡに使っています。

 もう一つのMCカートリッジDL-102は出力電圧レベルがDL-103の10倍の3mvあるので、MMポジション直結で聞けます。でも、AU-305を間に挟んでみたら、厚みのある力強い音にびっくり、やはりMCトランスの必要性を感じました。

 とりあえずは、YAMAHAのコントロールアンプC-6のMCヘッドアンプを使っていましたが、今回ようやくオークションで購入しました。

 オークションには他に、モノラルアンプ専用トランスとか、私家版のDL-102専用トランスが出ていましたが、いずれも値段的に折り合いが付かず、手頃なこのトランスになりました。

 AU-320は入力2系統切り替え、3Ωと40Ωが切り替えができます。いろいろな組み合わせが考えられますが、今のところは3Ωの方で聞いています。

 AU-305は40Ωなので、聞き比べるためAU-320の方も40Ωにして聞いてみたところ、わずかにAU-320の方が音が細くなる傾向があるように感じました。同じ、DENONのMCトランスでも微妙に違うものなんですね。

 

 

 ところで「空兵のジャズ館」2007年の7月から初めて3年と10ヶ月になりました。初めは不定期に更新していたのですが、いつからか週一回の更新となり、このごろはジャズ&オーディオのテーマから外れ気味だったり、なんとなく煮詰まり感も感じてきました。

 そこで、一度閉館して一息入れ、次は「そらへいの音楽館」としてリニューアルオープンしたいと思います。とオーバーに言ってみても、中身は今までと変わるはずもないのですが。

 1週か2週か休むかも知れません。再開の折りには、今まで通りおつきあい、よろしくお願い致します。


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桜とスピーカー [オーディオ]

DSC_1467.JPG   我が家、唯一自慢の桜

 

 ようやく春ですね。昨日は暖かくて、昼間は5月の陽気だったそうです。桜も、木蓮も、雪柳もタンポポも猩々袴もみんないっぺんに咲き揃いました。

 

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 こうなると、新しい季節に合わせて、何となく気分を変えたくなりますね。実は、もうずっと前から部屋が手狭になってきているので、模様替えをしたいなと思っています。ま、その前に荒れ放題の部屋を片づける必要がありそうですが。

 オーディオの方も、色々とプランはあるのですが、ここのところ目立った更新はありません。原因は簡単です。ひとえにお金がないことに尽きます。それでカートリッジ、アンプ、スピーカーの組み合わせをあれこれ替えてお茶を濁しています。

 

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 しかし、何時までもそんなこともしていられないので、新しい季節も来たことだし、以前から考えている計画の一つを実行しようと思いました。それは以前オークションで落札したセレッション3というスピーカーを復活させることです。

  このスピーカーは1990年前後に発売された定価5万円ほどの英国製小型ブックシェルフスピーカーです。元々は密閉型でしたが、私のものは後期型で、背面にバスレフポートがあいているmk2のようです。

 幅185×高さ310×奥行215mmという小さなボディと値段からは想像できないほど豊かな音楽性と、厚みのある音を聞かせてくれます。ジャンルもジャズ、クラシック、歌謡曲なんでもそれなりに楽しく聞かせます。

 

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  お気に入りだったのですが、ある特定の入力で低音が割れることがあって、泣く泣くシステムからはずしています。代わりにと、イメージが似ている気がしてタンノイE11をやはりオークションで落札しました。こちらはおとなしすぎて、音が寝ぼけ気味、前に出てきません。次第に聞かなくなってしまいました。

 ジャズやポピュラーはJBL4312Dコントロール1で聞き、クラシックは、古くから持っているスキャンダイナA25mkⅡと真空管アンプで聞いているのですが、気軽に聞けないのが欠点です。

 さてスピーカーの修理ですが、ネットで調べてみると一本15000円ほどするようです。2本で3万円です。JBLタンノイなどの古い名器ならともかく、元々の値段が5万ほど、落札価格に至っては1万円の小型スピーカー、3万円も出すのは、何となく気が引けます。

 それならその予算で、別の完動品のスピーカーを探した方がよいのではと思い、オークションを物色してみたのですが、これが資金力の無い悲しさ、なかなか落札できません。

 惨敗に次ぐ惨敗でフラストレーションが溜まるいっぽうです。一方で気軽にクラシックが聞けるスピーカーへの要求は高まるばかりです。

 いつも音が割れるわけでもありません。小音量なら聞けるので、隅っこに転がっていたセレッション3を真空管アンプではなくYAMAHAAX-1200の方に繋いでみました。

 やはりいいですね。何度聞いても、いつまでも聞いていたくなるような心地よい音です。特にセレッション3を通して聞くFMの音に甘みと温かみを感じます。

 CDだとものによって高域が少しうるさく聞こえることもあるのですが、全体に甘く柔らかい高音です。中低域は厚みがあって躍動感があります。温かみのある音と言っても、眠い音ではなく、ちゃんと各楽器を分離します。雰囲気があって、音楽のノリを表現する能力に長けたスピーカーだと思います。

 

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 もう数日経つのですが、不思議なことに今のところ、例の低音の割れが聞こえません。もしかして放っておいた間に何かの拍子で治ったのでしょうか。まさかです。季節的なことでも関係しているのでしょうか。

 以前、古いLUXのプリンメインアンプL-504が頻繁に電源が落ちる現象に見舞われたことがありました。そのときは、うんともすんとも言わないのですが、しばらく放っておくと訳もなく立ち上がるのが不思議でした。

 そのことを訝っていたら、同じプリメインアンプをお持ちのyayoishibainuさんから、自分のところのL-504も季節によって同じような現象を繰り返していると教えていただき、妙に納得したことがあります。こういうこと古い機器ではままあることなんでしょうかね。

 いずれにしても、久しぶりにセレッション3の音が聞けるのが楽しくて、レコードやCDを取っ換え引っ換えして聞いています。時に期待以上の演奏を聞かせてくれたり、思ったほどでもなかったり・・・

 オーディオって、本来は音楽を聞くためのものなのですが、スピーカーやアンプやカートリッジを交換したり新調したりすることによって、反対にもっと音楽を聞く楽しみを広げてくれたり増してくれたりすることがあるようです。セレッション3、このまま機嫌よく鳴り続けてくれたらいいのですが。

 

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スタイラス・クリーナー [オーディオ]

 彼岸も明けたというのに、寒い日が続いています。冬が寒いのは当たり前ですが、春が寒いのは困りますね。とくに今年はよけいです。

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 でも、この寒さの中でも、家の裏の桜、いつの間にか蕾をふくらませているので驚きました。寒い寒いと思っていても、時々ある暖かさを自然は確実に汲み取っているのでしょうね。

 今日はこれと言ったことも思いつかないので、震災の影響で延ばし延ばしになっていたスタイラス・クリーナーの話をすることにします。スタイラス・クリーナーは、レコードプレーヤのピックアップ部、カートリッジの針先を清掃する道具です。

P1010153.JPG 若いときはオーディオテクニカAT607を愛用していました。キャップの裏にブラシもついていて、液のついたブラシを針の向こう側からそっと手前に拭き取ります。

 ところがある時どこかで、液式のクリーナーはカートリッジに対してあまりよくないと言う記事を見かけました。毛細管現象でダンパーを痛める云々と書いてあったと思います。それで液式は時々使うだけにして、普段はブラシだけで目立つ埃を取っていただけの時期がありました。

 P1010156.JPG これはマイクロのレコードプレーヤーMR-411に付属していた毛先が柔らかいブラシです。カートリッジを買うとついて来るブラシはナイロン製が多く毛先が固い気がします。マイクロのこのブラシ、いつかオークションに出品されているのを見て、驚きましたがそこそこの値段が付いていて二度驚きました。

P1330540.JPG こちらが現在使っている、スタイラスクリーナーです。オンゾウ・ラボ社製スタイラスクリーナー「ゼロダストハイクリーナー」と言います。演奏前に、針先をこの透明部分に降ろします。触るとぷにょぷにょした感覚の、軟質透明プラスチックが針先を包んで汚れを取ってくれます。

 すごく簡単、手軽でかつ針先にも安全です。軟質プラスチックの表面を見ると、針を下ろした跡が汚れているので、確実に針先の汚れを取ってくれているのがわかります。汚れてきたら、水洗いすればまた使えます。

 これはなかなかアイデアものです。しかもこのクリーナー、私が買ったときは2000円しませんでした。今でも2000円をわずかに超える金額で販売されているようです。

 いつから販売されているものなんでしょう。若い頃、広告か何かで見たことがあるような気がします。もうウン十年も作り続けられている商品ではないでしょうか。

 高いのが当たり前のオーディオ回りのアクセサリー類の中では飛びぬけて安くかつ手軽です。そこがこの商品の魅力ではあるのでしょうが、趣味の世界のオーディオ、そのアクセサリー品です。デザインとか色遣いに、もう少し色気というか、工夫があってもよさそうな気もします。とくに実用一点張りの緑色のプラスチックケースは、何とかならないかなぁと思います。

 100均とか小物を売っているお店に行くと、このスタイラスクリーナーをうまく収めるおしゃれな箱がないか、いろいろ物色しているのですが、なかなか適当なのが見つかりません。

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 この記事を書いているとき、いつもかけ流しにしているipodクラシックから、サッチモの渋い声が流れてきました。ただランダムに流れる様になっているのですが、夜になってボーカルがかかるとつい、耳をそばだててしまいます。

  let's do it (let's fall in love) サッチモの歌に絡む ピアノが絶妙です。オスカー・ピーターソンでしょうか。8分と少し長い曲ですが、飽きずに聞かせます。


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オーディオチェック [オーディオ]

Image0037-1.JPG 若い頃お世話になった月間Stereo誌です。このところ、めっきり手にすることがなくなりました。最近のオーディオに興味がないというか、付いていけません。もちろん金額的な理由です。

 今回の1月号も特集は2010年のベストコンポの紹介だったのでスルーするつもりでしたが、付録にオーディオチェックCDが付いていたので、久々に買うことにしました。

 ずっと昔、オーディオチェック用のレコードだったか、CDだったかカセットだったか持っていた気がするのですが、オーディオ離れしている間に紛失してしまいました。

 オーディオ再開してから一度もチェックしていません。まさか結線間違いなどしていないとは思うのですが気になっていました。

 

 10月にJBL4312DのRIGHTを買って、YAMAHAのトランジスタアンプAX-1200に繋いでエージングしていました。LEFTは従来どおり真空管アンプのA-3500に繋いで、どちらもモノラルで聞いていました。しかし、現金なもので揃ってみると早くステレオで聞きたくなってきました。

 まだ左右、エージングのずれはあると思うのですが、年も変わったことですし、この機会に、本来の姿に戻して揃えることにしました。

 ただし、繋いだのはクリアでパンチのあるAX-1200の方です。もう一系統もJBLコントロール1なので、このアンプのスピーカー出力は二系統ともジャズ、ポピュラー向きになってしまいました。

 A-3500にはとりあえず、スキャンダイナを繋いでいます。しばらくは、ジャズを聴くならトランジスタ、クラシックを聴くなら真空管アンプということになります。

 さて、オーディオチェックCDの中身は以下の通りです。

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 一応必要な項目は網羅されているような気がします。結果は以下の通りでした。

左右チャンネルチェック
 1,2,3、バイオリン一本の演奏なのでわかりやすいです。始めは左チャンネルから、次に右チャンネル、それぞれの方向のスピーカーから音が出ているのは当たり前ですが、反対側のスピーカーが無音になっているかもチェックします。ステレオ再生では音の厚みが増しました。

 それにしても4312D、ジャズ向きでクラシックは駄目かと思ってましたが、バイオリンソロをきれいに再生したので驚きました。ふあっとした空気感まで伝わってきました。

スピーカーの位相チェック
 これもピアノソロなのでわかりやすかったです。4、が正位相でピアノの音が、ちゃんと二つのスピーカーの真ん中から聞こえてきます。5、が逆位相で、私のシステムでは音が曖昧になり、右の方にずれて聞こえました。6、はステレオ再生で、さすがに広がりが出ます。

 ここまでが結線の基本です。ちゃんと聞こえて当たり前、問題なしで当然です。

定位のチェック
 7、はモノラル、ちゃんと真ん中から聞こえ音ゆれはありませんでした。
 8、これは倍音がきつくしかも弦楽器ばかりなので解説どおりにはなかなか聞き取りにくかったですが、おおよそ定位していたように思います。
 9、こちらの方が楽器の特色がはっきりしているので、定位がわかりやすかったですね。それにしても最新の録音のリアリティにびっくりです。
 10、きちんと定位した録音をされている音源なので、音がふらついたり抜けたりすると、室内に問題があるそうですが、問題なく聞こえたと思います。
 11、おなじみの蒸気機関車が左から右手に駆け抜けていくのですが、かなり迫力ありました。


再生帯域のチェック
 12、これはオルガンの音が聞こえるかどうかが味噌なのですが、耳を澄ますと、かすかに鳴っていました。
 13、ドラムとベースの音のチェック、さすがにこの辺はJBLのお得意、低音が膨らんだりぼんついたりしませんでしたね。
 14、15、解説にあるように、ある瞬間からの変化が体感できました。
 16、高音域のチェック、違和感はありませんでした。
 17、18、 これも解説にあるように体感できたと思います。

分解能のチェック
 19、ここではハープのアルベジオが聞こえるとかなり優秀な装置なのだそうですが、残念ながら私のシステムでは聞き取れませんでしたね。
 20、ベースもしっかり音階を奏でていますし、ドラムの音がピアノに隠れることはありませんでした。
 21、鐘の音の残響が長すぎたり短すぎたりしないかというチェックでしたが、ちゃんと再生していましたね。
 
部屋の共振や吸収のチェック
 22、信号音が直線的に上昇していきます。地鳴りのような重低音から次第に高まっていくのですが、ちょっと気持ち悪かったですね。

残響のチェック
 23、2425、26、ピンクノイズで部屋の残響をチェックする項目ですが、変な余韻はなかったように感じました。


 測定器を使うわけではなく、自分の耳だけを頼りのテストでしたが、特段これといった違和感もなかったように思います。いつもこの装置、この部屋、この耳で音楽を聞いているので、違和感がなければよいのではないかと思います。
 
 同じJBLでもコントロール1だと値段もサイズも違うので、ここまでの成績は残せないかなと思います。また、真空管アンプとそれに繋いだスキャンダイナもかなり癖のある構成なのでまた違った結果が出そうに思いますが、いまだテストする時間が取れずにいます。

 


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JBL 4312D RIGHT [オーディオ]

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 毎度おなじみ、我が家のと言うか、わが庵の家宝みたいになってますJBL4312Dです。何せ初めて買った憧れのJBL、しかも珍しく新品での購入でした。ただ、片チャンネルだけなんですが。

 

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 こちらは2007年12月の記事に掲載した写真です。背景も同じで、上の写真とは角度が違うだけに見えますが、実は違う個体です。さて、どこがどう違うでしょうか。

 正解はツィーターとスコーカーの位置が反対になっています。そうです、とうとう残りの片チャンネル購入しました。これで4312Dの左右セットがようやく揃いました。私は二年前と思っていたのですが、古い記事の日付は2007年12月14日、なんと約3年ぶりでした。

 3年前、私は左利きでも左翼でもないのですが、JBL4312Dの左チャンネルを一台だけ買いました。なぜそんなことをしたかと言うと、一度に両チャンネル揃えるだけのお金がなかったからです。

 若いころお金がなくてスピーカーを片チャンネルずつ買ってオーディオを揃えようとしたことがありました。50歳代半ばからのオーディオ復活も、図らずも若いころと同じになってしまいました。

 もちろん最初は若いころと同じように、半年後、少なくとも一年後には残りの片方を買って、両方揃えるつもりでした。ところが、そのころからモノラル再生に目覚めはじめ、モノラルならスピーカー一台でも良いのではないかと思うようになったのです。

 残りの片チャンネル用の資金は、真空管アンプA-3500の購入に流れました。しかし、A-3500の出力は一系統で、片チャンネルだけ使っているとアンプに悪影響を与えると聞いたので、余っているチャンネルにスキャンダイナを繋ぐことにしました。

 そうするとバランスつまみを左右に絞ることによって、ジャズを聞くときはJBLを選択し、クラシックを聞くときはスキャンダイナが使えます。これでスピーカー切り替え器を使わなくてもスピーカーを使い分けることができます。

 その後も、もう片方のスピーカーの資金はデジタル一眼レフカメラ購入やA-3500の修理などに流れつづけました。

 今夏でしたか、4312Dは4312Eにモデルチェンジしました。その時はなんとも思わなかったのですが、最近ふと気になるところがあって、4312Dを調べてみたところ、当然のことながら注文カタログから4312Dは落ちて4312Eに変わっています。

 4312Dを販売しているところは限られていて、価格は旧モデルになったため値下りしているのですが、ほとんどがペア販売になっています。

 少し焦りました。このままでは、我が家の4312Dは片チャンネルのままになってしまいます。いっそこのままモノラル再生、片チャンネルのままで押し通してしまおうかとも思いましたが、4312Dでステレオ再生してみたい思いもあります。

 アマゾンのマーケットプレイスで、片チャンネル販売を見つけました。少し割高でしたが、それでも最初に左チャンネルを買った時よりは一割ほど安くなっています。もちろん、急な思いつきだったので資金の準備は一切なく、クレジットに頼りました。

 

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 久しぶりに我が家に大物が届きました。JBLの威光は未だ若い人にも通じるんですね。宅配のお兄さんが荷物をおろしながら、「いいものを買われましたねぇ」とちょっとうらやましげに見ていました。

 背面にあるシールを確認すると今回もメキシコ製です。しかもシリアルナンバーが以前のものと3000番も違います。もし、ペアで中古で売るなら、シリアルナンバーが揃っていないことはちょっとしたダメージになるでしょうね。

 せっかく揃ったJBL4312D、すぐにも左右並べて聞きたいところですが、3年のブランクは大きすぎます。

 ともかく、新しく届いた右チャンネルのエージングを済ませ、最低1年くらいはこちらも片チャンネルで使ってから、揃えて聞いてみようかなと思ってます。

 

 さすがに最初の音は、ゴワゴワしてました。でも荒いながらもトランペットの音にはっとしたり、相変わらず太鼓系の音はよく弾みます。

 できるだけ早くエージングを進めるため、部屋にいないときでも音出しして鳴らしています。届いてもう一週間あまりになるのですが、すこし耳あたりがよくなってきた気がします。何より低中高音ともに、音が前に出て気持ちよく伸びるようになってきました。

 

エイプリル・イン・パリ   カウント・ベイシー「エイプリル・イン・パリ」をかけたら、まだ音が硬めとはいえ、軽快でパンチのあるサウンドを聞かせてくれました。エージングがある程度済んでから、今度はカートリッジもDL-102に付け替えてもう一度聞いてみました。

 スピーカー一本でもすごい迫力です。1955年録音のカウント・ベイシーオーケストラ、いかにも気持ちよさげにスイングしてます。これぞビッグバンドの迫力、ダイナミックなオーケストレーションに軽妙なソロが絡みます。ビッグバンドの醍醐味満喫です。

 

 

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 左右揃った4312D、しかし、今は一本ずつモノラルで別々のアンプにつながっていますし、配置もこの写真では左右チャンネルが反対になっています。

 これでよいと一時期満足していた我がオーディオシステムですが、知らない間に私自身の嗜好が少しずつ変化して行ったり、また、今回のように外的要因で、変化していくことがあるようです。

 我が家はあまりオーディオに大きなお金をかけられませんが、これからもがらくたオーディオを買いましながら、どんな展開になっていくのか楽しみでもあります・・・それにしてもスピーカー揃えるだけで3年もかかってしまうとは、気の長い話です。

 いつになるかわかりませんが、数年後ひょっとすると4312Dはトランジスタアンプに繋がり、A-3500にはオールドタンノイとオールドJBLがつながっているかもしれません。そんな夢を見ています。

 


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松下6CA7(EL34) [オーディオ]

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 秋はすこしずつ進んでいくようです。

 

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 今年は、猛暑だったせいかあちこちでセイタカアワダチソウがいつも以上に目立っているような気がします。

 

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 十月桜はまだ花をポツリポツリ着けているだけでした。

 

 昨日10月21日は、誕生日でもなければ、何かの記念日でもない、とりたててこれといったこともない日でしたが、家に帰ってみると嬉しいプレゼントが届いていました。

 律儀なアンプ屋さん、真空管アンプ修理mkb&真空管オーディオ販売mkbさんから、松下製の真空管6CA7(EL34)の残りの一本が届いていました。この真空管はLUXA3500の純正真空管です。

 以前mkbさんが中古の松下6CA7(EL34)を3本送って下さって、残りの一本は何時になるかわからないけれど、出物があれば送ってくださるということでしたが、その後、暑さのせいでしばらく真空管アンプを休んでいたりしたこともあって、すっかり忘れていました。

 すぐにも聞きたいところでしたが、あいにく、昨夜は田舎の寄合があったので、聞くことができませんでした。今夜、真空管を差し替えて聞いています。真空管の聴き比べは、真空管が冷めないと差し替えできないので、今まで使っていたフィリップスの7581JJ管の音は、はなはだ心もとないですが記憶に頼ることにしました。

 

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 名は体を表すといいますが、見た目通り、フィリップスの7581は丸っこくて輪郭がややぼんやりした厚みのある音、一方6CA7(EL34)はやや細身ですっきりした音という傾向があるかと思います。

 計測してデジタルで埋め尽くすようなリアリティとは違った意味で、聞いていて何か迫り来るもの、直接情感に訴えてくるようなリアリティを感じます。松下製の6CA7(EL34)がフィリップスの7581より繊細だからでしょうか。

 また、mkbさんもおっしゃっていますが、JJ管などの現代球には、きらびやかなところがあり、時にそれがツーンとくることがありますが、この球は、派手さはありませんが素直で飾らない良さがあるような気がします。

 ジャズを聞いてから、クラシックも聞いてみました。バランスつまみを回して、スピーカーをJBL4312DからスキャンダイナA-25MKⅡに切り替えます。

 私は、オールドタンノイの音を聞いたことがありませんし、いずれ手に入れたいなと思っているのですが、今日この組み合わせでグルミュオーを聞いてみたら、別にこのままでもいいのじゃないかと思いました。

 オールドタンノイどころか、私が知り聞いたオーディオ製品などたかが知れていますし、最新式オーディオの凄さも知らないのですが(値段の凄さは知っています)、今回改めて真空管の良さを再確認しました。mkbさん、ありがとうございました。

 

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虫(グレースF8) [オーディオ]

 いつもこの時期なると、野原には花や蝶が飛び交って、春のような錯覚を覚えることがあります。実際、秋の花に混じって季節外れのタンポポやカタバミが咲いていたりします。冬に向かうのと夏に向かう違いはありますが、春と秋の気温や湿度がちょうど今頃、交差するのでしょうか。

 

DSC_2476.JPGヨメナ

DSC_2502.JPGミゾソバ

DSC_2546.JPGヤナギハナガサ

DSC_2565.JPGカタバミの蜜を吸うヒメタテハ

DSC_2622-1.JPGキツネノマゴに止まるキチョウ

DSC_2640-2.JPGエノコログサとヤナギハナガサ

DSC_2646.JPGヒヨドリバナに止まるベニシジミ

DSC_2665-1.JPGアキアカネ

 

DSC_2583.JPG コスモス畑の竹垣の竿の一本ずつに、アキアカネやノシメトンボが止まっていました。カメラの技術が無いため、もう一つうまく表現できなかったのが残念ですが、ユーモラスで長閑な光景でした。

 他にも虫たちはあちこちにいます。畑で作業をしていると、引いた草の塊の中から、コオロギが飛び出してきます。パタパタと羽音が聞こえるのはバッタたちです。あんな小さい身体でも結構大きい音がするものです。

 大きな葉の間から、人の指よりも太くて長い蝶や蛾の幼虫が現れて、驚かされます。雨が降って、ほんの2,3日畑に行くのをサボったら、キャベツやブロッコリの葉が、ボロボロになっていました。よく見ると葉の表面に葉の色と同じ色をしたヨトウムシがあっちにもこっちにもへばりついていて、取っても取っても切りがありません。

 

 今日のタイトルは「虫」です。しかし、カテゴリーはいつものようにオーディオ、どういう繋がりかというと、古いオーディオマニアの方はご存知かと思いますが、オーディオで「虫」と言えば、グレース(品川無線)のカートリッジです。

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 かくいう私も、若い頃その名前と姿は広告やオーディオの記事で知っていただけで、実物は今回初めてです。確かに、あだ名の通り、全体が虫に見えなくもありませんね。また透明なクランプがトンボの複眼を連想させます。

 F8はNHK放送技術研究所と共同開発されたMMカートリッジです。このへん、MCのDENONDL-103と似た成り立ちですね。

 末尾がD、L、H、C、M、V、Fなどにわかれています。交換針のクランプの色で区別されていて、それぞれ音の傾向が違うそうです。その中でもF8Lは有名です。私が今回手に入れた物はクランプが透明なので、F8Lだと思います。

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 音の印象は、ちょっと感動的なくらい透明感のあるものでした。清澄と言えばよいのか、グリュミオーのバイオリンが透き通るように綺麗に鳴りました。エラ&ルイのエラの歌声がいつもにもまして、可憐です。

Paul Desmond & Modern Jazz Quartet Paul Desmond&The Modern Jazz Quartet

 ポール・デスモンドのアルトが気持ちいいですね。MJQとの共演は、すごくリラックスしていて、そのくせジャジーです。このカートリッジは、ただ透明感があるというだけでなく、この演奏の楽しくリラックスした雰囲気、空気感、ニュアンスなどもちゃんと伝えてくれます。

 

 スピーカーなどでも言えることですが、欧米の機器は彫刻で言うとミケランジェロのように筋肉質でダイナミック、反対に日本製は、仏像のように余計なものを削ぎ落し、あっさりした印象ですが、このカートリッジは良い意味で日本的ですね。

 私の乏しい経験では、MCカートリッジに比べてMMカートリッジはスクラッチノイズを拾いやすい気がするのですが、F8はそういうところもないですね。またレコードの内周に進むに連れて歪むということもなく、トレース能力も優れている気がします。

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 畑の虫はともかく、私はこの”虫”がすっかり気に入ってしまったので、ずっと使い続けようと思いました。それではじめはDENONのシェルに付けていたのですが、グレースはやはりグレースが似合う気がして、あとからシェルだけ別に購入しました。シェルでも音が変わるそうですが、私の耳はそんなに良くないので、DENONとの区別は付けられませんでした。

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オルトフォンVMS20E MKⅡ [オーディオ]

 一昨日でしたか、しとしと雨が、夕方から翌朝まで降り続いて、久々に大地の奥の方まで潤いました。気温も昼間動くとさすがにまだ汗ばみますが、朝晩は夏の格好をしていると寒く感じるほどです。

 家の裏の桜の木は、早い紅葉と落葉、それに暑さのせいか大量発生した毛虫のせいで、枝に残っている葉っぱが残り少なくなってきました。その毛虫を狙って、ツツィ、ツツィと聞き慣れたさえずりで、山からシジュウカラがやってきています。何度かカメラを構えたのですが、なかなかシャッターチャンスに恵まれないまま、逃げられてしまいました。

 

DSC_1406.JPG オルトフォンVMS20E MKⅡ

 今日はオルトフォンのカートリッジです。オルトフォンと言えば、なんといってもMCカートリッジが有名ですが、種類が豊富な上、トランスとの相性などもあって相当奥が深そうですし、またお金もかかりそうです。

 オルトフォンのMCカートリッジでレコードを聞くというのは、わたしのオーディオ生活にとっても一つの夢なのですが、今回はとりあえずお安いところで、オルトフォンのMM(正確にはMI)カートリッジ、しかも中古でのお話です。 

 このカートリッジのことはほとんど知らないまま、値段が安かったことと、オルトフォンということだけで落札しました。発売時期は1978年、価格は25,000円。当時そこそこ人気があったカートリッジだったようです。ちなみに同じシリーズにVMS10E、VMS30Eがあり、数字の大きい方が値段も高くなっています。

 今回も純正シェル付きなのでそのまま指定針圧の1gに調整して、レコード盤に針をおろしました。それにしても1gとは、1970年代後半、すでに軽針圧時代に突入していたんですね。

 期待通り柔らかく豊かな響きがスピーカーから出てきました。でも次の瞬間、あれ、どこかおかしいと思ったら、右チャンネルからしか音が出ていませんでした。

 

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 調子に乗って、安いカートリッジばかり落札していたら、とうとう不良品を捕まされてしまったのでしょうか。この商品返品可だったので、冷静に対応すればよかったのですが、つい焦ってあちこちいじってしまいました。

 まず接触不良を疑って、針を抜き差ししてみます。その次にリード線を疑い、最後にはヘッドシェルも交換してみましたが改善されませんでした。

 全く音が出ないならともかく、片チャンネルは音が出ているのであと少しに思えて、あれこれといじっているうち、音が出ている右チャンネルまで、極端に音が小さくなってしまいました。こうなってしまうと、もう返品もできません。

 全ては後の祭りです。ただ、一旦火が付いた思い、なかなか鎮められません。片チャンネルだけでしたが、ほんの少し聞いたVMS20E MKⅡの音がやたら魅力的に思え、どうしてもちゃんとした音で聞きたくなってしまいました。

 もう一度、ヤフオクで同じものを落札して、同じ失敗を繰り返したくないので、オークションより少し値が張りますが、安全確実な中古ショップから入手することにしました。

 

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 待つことしばし、中古ショップから届きました。30年前の中古品、ボディは錆だらけで私が落札したカートリッジの方が綺麗なくらいでした。しかし、音はちゃんと両チャンネルから出ました。

 仕切りなおして聞いたオルトフォンVMS20E MKⅡ、抱いていたオルトフォンのイメージを裏切らないものでした。このカートリッジ、どちらかというとMCに近い音なのではないでしょうか。なにより音楽の奏で方が上手で、歌うところは表情が豊かに、弾むところはテンポよく跳ねて、ジャズでもクラシックでも音楽を楽しく聞かせてくれるところに感心します。

 どちらかというと、クラシックの方がより優っているような気がします。ジャズはスピード感やエネルギッシュさより、しっとり聴かせるタイプなのかなと思います。

ブルース・ウォーク

ブルース・ウォーク



 ルー・ドナルドソンのアルトが冴え渡ります。コンガもちゃんとそれらしく聞こえます。どのカートリッジだったか、コンガの音がひしゃげて聞こえたのがありました。


 
エラ・アンド・ルイ

 エラ&ルイ

 なぜかこのカートリッジでは、エラではなくサッチモに焦点があたりました。サッチモの歌声がグイグイと押し迫ってきて驚きました。

 

 

 試しに、ヤフオクで落札した方のカートリッジに付いていた針を付け替えてみると、しっかり音が出たので、針ではなくカートリッジが故障していたことがわかりました。ショップで買ったのより半額近く安かったので、中古の交換針と純正のシェルを買ったと思えば納得出来る気がします。

 それにしてもカートリッジをいろいろ交換していて気づくことは、レコードによって千差万別だということですね。期待して聞くと思ったほどでなかったり、逆に何も期待しないでかけたレコード、えっ、こんな音だったの、こんな演奏だったのと思わされたりすることがありますね。

 

オールナイト・セッション Vol.1

 今回聞いた中では、ハンプトン・ホーズ「オールナイトセッション1」が一番、新鮮に聞こえました。ハンプトン・ホーズのピアノは甘く叙情的で、ジム・ホールのギターが軽快に弾みます。

 

 

 

 

  暑い暑いと言っているうちに、9月も半ば過ぎ、来週はもうお彼岸です。雨の降り方が細いしとしと雨になって、この歌が似合う季節になってきたようです。 

 


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熱中症 [オーディオ]

DSC_1619.JPG    

 9月になりましたが、相変わらず猛暑、熱帯夜が続いています。もちろん雨も降りません。雨のなさは、大地の潤いを忘れ、木や植物だけでなく人も枯らしてしまいそうです。

 この前の日曜日、間近に迫った秋の取り入れに供え、営農で草刈りの動員がありました。朝8時から12時までの作業です。9月とは言えこの天候ですから、熱中症対策に凍らせた500mlペットボトルのお茶を4本持参しました。

 草刈と言っても草刈機で畦草を刈るのではなく、田んぼの中に生えている稲より背丈の伸びた草を稲刈り鎌で刈り取ります。この時期、田んぼの中には稗を初めいろんな草が生えていますが、今回刈り取る草はクサネム(草合歓)というものです。豆が落ちて籾に交じると米の等級が落ちるのだそうです。

 

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 これがクサネムです。ここまで大きくなると草と言うより木ですね。実際根本は親指ほどの太さになっていました。ただ簡単に鎌で刈れるところがやはり草です。

 

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 拡大すると、こんな感じです。確かに葉っぱがネムノキに似ていますね。日が落ちると休眠するところもネムノキと同じです。赤黒く垂れ下がった莢の中に豆があって、コンバインで稲刈りする時に籾に混じってしまうのだそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 私達の田んぼはほ場整備されているので、一枚が100メートル四方あります。皆適当に広がって伸びたクサネム目指して、穂を膨らませた稲田の中に入っていきます。ちょうど良いくらいに距離感があって、お喋りすることもないので、私は持参した携帯用のMP3プレーヤーで音楽を聞きながら黙々と作業しました。

 動力式の草刈り機に比べると作業は楽でした。騒音も振動もありませんし、重くもありません。ときどき刈り取るために屈まなければいけないのがしんどいと言えばしんどいのですが。

 クサネムは部分的に密集しているところもありましたが、ほとんどがぽつりぽつりと生えているだけです。田んぼ一枚終えると次の田んぼへ移っていきます。

 何枚くらいこなした頃だったでしょうか。11時を過ぎたあたりから急に疲労を覚えるようになりました。ときどき曇るとはいえ、日射しは強く風もありません。持参したペットボトルは3本目の半分ほどまで消費していましたが、ときどき軽く、頭が痛みます。足元がふらつくのは屈んで急に立ち上がったからでしょうか。後一時間が途方もなく長く感じられました。

 12時前、ようやく合図があって作業が終了しました。這々の体で家に帰ります。すぐにシャワーを浴びて横になりました。軽い頭痛、胃のあたりが少し気持ち悪くて、そのまま、冷房のきいた部屋で横たわっていたら、珍しく足が攣りました。

 軽い熱中症だったのでしょうね。お茶を飲んで十分水分補給していたつもりだったのですが、それだけでは駄目なんですね。後日テレビを見ていたら、汗には塩分が混じっているので、補給は水分だけではなく塩分の補給も必要と言ってました。水やお茶ではなく、スポーツドリンクが有効なのだそうです。

 この日の参加者は15名ほどでした。40代から70代まで、とくに70代の方が4名おられました。あのあと何ともなかったのでしょうか、そのタフぶりには驚きです。もちろん、私はその後、少し休んだだけで何ともなくなりましたが。

 

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 さて、今日の熱中症の話はこれで終わりではありません。実はもう一つ熱中症にかかっております。こちらは重症かも知れません。

 前々回に紹介したシュアーV15typeⅢで始まったカートリッジ交換、すっかり嵌ってしまって、その後、いくつかカートリッジをヤフオクで落札してしまいました。

 その中の一つ、今日はエンパイヤ-400TCというカートリッジです。エンパイヤーというと、4000シリーズが有名なのですが、型番が似ていることと値段が安かっただけで衝動的に落札してしまいました。

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 届いてみると、針カバーの赤いプラスチックがなんとも安っぽく見えます。エンパイアー純正のシェルが付いているのが救いです。すぐ針圧調整だけしてレコードをかけてみました。

 針を降ろして出てきた音は、悪くありません。元気です。からっとしていて屈託がありません。美しい音、魅惑的な音と言うわけではありませんが、粗いと言うこともなくしっかり鳴っています。

 

DSC_1590.JPG 音がしっかりしているせいか、ジャズに合います。シンバルがよく聞こえます。JJ・ジョンソンのトロンボーンの輪郭がはっきり聞こえます。艶やかと言うわけではないのに、妙に管楽器に合います。

 乾いていて情緒に欠けるのでこれでクラシックの曲を聴こうとは思いませんが、ジャズにはぴったり、安心して聞けます。

 

 トレース性能も悪くありません。MMカートリッジのせいか盤質の悪いレコードだとスクラッチを拾いますが、気になる程でもありません。

 皮肉な話、シュアーV15typeⅢの評判がそのままこのエンパイヤー400TCにぴったり当てはまりそうです。アメリカ製品らしく乾いていて音離れが良く、力強さもあります。

 シュアーV15typeⅢのあとから聞くとよけいに力強く聞こえてしまいます。私のシュアーV15typeⅢ、少し出力音圧レベルが低いような気がします。針が駄目になっているのかも知れません。

 

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 今夜の「9月の歌」は、エラ・フィッジェラルドです。この前のサラ・ボーンとはまた違って、しっとりと歌い上げています。早くこの歌に似合う9月になって欲しいものです。


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